目前に迫った国民健康保険の都道府県移管で何が変わるのか

[2018/3/5 00:00]

2018年4月に国保が変わる

2018年4月に始まる平成30年度から、国民健康保険(国保)の大幅な制度改革が行なわれます。

この改革は、一言で言えば、これまで市区町村が主体だった国民健康保険に、都道府県が関与するものです。

資格の管理など、かなり多くの部分について都道府県が管理することになり、国民健康保険の制度全体が大きく変わります。

この記事では、今回の改革が、一般の国民健康保険の加入者に、どのような影響があるのかに絞って紹介します。

保険証や窓口は変わらない

国民健康保険の制度改革は、財政や制度に関わる部分が中心です。

加入者に関係のある窓口業務などはこれまで通り市区町村が担当します。

例えば、健康保険料の支払い、高額療養費制度の申請など、申請や相談に関することはこれまで通り、市区町村の窓口で行ないます。

また、健康保険証の発行も、市区町村が行ないます。

結論として、『国民健康保険の窓口は、市区町村のままで変わりません。現在、持っている健康保険証も、そのまま使用できます』。

高額療養費制度が一部変わる

制度改革による小さな影響の1つに、「高額療養費の多数回該当」があります。

高額療養費制度には、1年間に4回以上該当すると、自己負担分が少なくなる「多数回該当」という制度があります。

これまでは、市区町村単位で該当する回数を数えていたので、別の市に引っ越しをすると回数がゼロに戻っていました。

しかし、これからは回数を数えるのが都道府県単位になるので、同じ県内であれば、回数を通算して数えてくれます。

例えば、大きな病気で入院を繰り返す状態になり、借家を引き払って、同じ県内の別の市にある実家に戻って療養するような事例を考えてみましょう。

これまで住んでいたところで3回高額療養費制度を使い、実家に住所を移してから、もう1度使うことになりました。

これまでは、市区町村が変わっているので回数がリセットされて、4回目として数えて貰えませんでした。しかし、今後は、同じ県内であれば4回目として扱われ、多数回該当で支払う医療費が少なくなります。

高額療養費制度の一覧。一番右の欄が「多数回該当」の金額 出典:厚労省

将来的には都道府県内の保険料が統一される

国民健康保険の制度改革の影響で、加入者への影響が大きいのは、健康保険料の変化でしょう。

これまで、健康保険料の金額は、市区町村が決めていました。

しかし、これからは、都道府県が「標準保険料率」を定め、それを基にして市区町村が保険料率を決めます。

県単位で標準化が進み、最終的には「同じ所得、世帯構成であれば、県内のどこに住んでいても同じ保険料になる」制度を目指します。

現在の健康保険料は、同じ県内であっても、大きな差があるのが当たり前になっています。

しかし、今後は、これまで安かったところは値上げされ、高かったところは値下げされるでしょう。
値上げの場合は、一度に行なうと負担が大きいので、これから数年間に渡って、少しずつ上がっていきます。

健康保険料が値下げになる市区町村は多くありません。あまり期待しないほうが良いでしょう。

都道府県と市区町村の分担 出典:厚労省

健康保険料の計算方法も統一に

もう1つ、健康保険料の計算方法にも影響が見込まれます。

これまで、健康保険料の計算方法は、次の3通りがありました。

  • 二方式 所得割、被保険者均等割に按分する
  • 三方式 所得割、被保険者均等割、世帯別平等割に按分する
  • 四方式 所得割、資産割、被保険者均等割、世帯別平等割に按分する

同じ県内であっても、市区町村によって計算方法が違うので、他の市区町村と比べて、健康保険料が高いのか安いのか比較することが難しかったのです。

しかし、新制度では、都道府県の標準保険料率は、「二方式」で決められます。

都道府県が計算して、市区町村に伝える保険料率も「二方式」によります。

現時点では、最終的な決定権は市区町村にあるので、これまで通り「三方式」や「四方式」を取り続けることも可能です。

しかし、わざわざ標準保険料率と、別の方法に置き換えて計算するのは大変ですから、最終的には「二方式」に変える市区町村が多いでしょう。

家族の人数に関わらず1世帯単位でかかる「世帯別平等割」や、土地や家屋などの固定資産にかかる「資産割」がなくなることで、人数と所得が分かれば、自分で健康保険料を簡単に計算できるようになるのは良い方向です。

すぐに大きな影響はないが、先行きには注意が必要

ここまで見てきたように、今回の国民健康保険の改革は、一般の加入者に対して、すぐに大きな影響はありません。

4月以降もこれまで通りに、今持っている健康保険証を使うことができます。

ただし、健康保険料の運営や計算が都道府県単位になることで、将来的には健康保険料の金額(料率)や計算の方法などに影響が出てくるでしょう。

今回の制度改革で、国民健康保険の運営が都道府県単位になり、人口が少なく運営が苦しくなっていた過疎地域の健康保険が危機に陥る可能性は少なくなりました。

全国どこでも安心して健康保険が使える体制の信頼度が上がったことは、大きなメリットです。

しかし、数値目標がはっきりしたことで、値上げの可能性が増え、健康保険料の取り立ての厳しさが増すことが予想されます。

これからの数年間は、自分が住んでいる自治体の国民健康保険について、変化を見守る必要があるでしょう。

[シニアガイド編集部]