一人暮らしが不安になった時の「ケアハウス」という選択肢
「ケアハウス」という老人ホーム
離れて暮らしている親が、そろそろ一人暮らしが不安になってきた。
しかし、介護保険の「要介護認定」を受けるほど、状態は悪くない。
こういうときに、入居できる施設を探すのは、難しいものです。
特に、資金に余裕がないと、入居できる老人ホームが少なく、施設探しに苦労します。
ここでは、そういうときに覚えておきたい候補の1つとして「ケアハウス」を紹介します。
60歳以上なら入居できる
「ケアハウス」は、「軽費老人ホーム」と呼ばれる老人ホームの一種です。
その特徴は次のとおりです。
- 60歳以上で自立した生活に不安のある人が対象
- 家族の援助を受けるのが困難な人
- 食事と生活支援サービスが付いている
- 自立型と介護型があるが、介護型は少ない
- 部屋は21.6平方m(約6坪)以上。2人部屋がある施設もある
- 日中は職員が常駐している
- 低所得者でも入居できるように、自治体や国から助成金が出ている
- 本人の収入に応じて料金が変わる
ケアハウスの生活イメージ
ケアハウスは、それぞれの施設の違いが大きくて、イメージがつかみにくい存在です。
ここからは、埼玉県のあるケアハウスを例にして、その生活イメージを紹介しましょう。
あくまでも1つの例に過ぎませんが、ある程度のイメージは持ってもらえると思います。
このケアハウスは「自立型」で、介護を受けるための施設ではありません。
位置づけとしては「住宅」です。
廊下は共有空間で、自分の部屋とは、ドア一枚で隔てられています。
部屋はワンルーム型で、ドアを開けると3畳間ぐらいの空間に、洗面台、トイレ、クローゼット、洗濯機置場があります。
その奥に6畳ほどの居室があります。
部屋の窓は南向きで、外は1畳間ほどのベランダになっています。
「住宅」なので、家具と電気製品は自分で選んだものを持ち込みます。
多くの人は、テレビと冷蔵庫、洗濯機、掃除機を備えていました。
このケアハウスでは、部屋のエアコンは備品ではなく、自分持ちでした。
故障や交換の際は修理費がかかります。
なお、生活支援サービスの一環として、居室の掃除、洗濯、買い物などが付いている施設もありますが、この施設では、掃除と洗濯は自分でおこないます。
食事とお風呂は共同
起床時間や就寝時間などは、特にありません。
部屋にはコンロなどの調理設備はなく、食事は大食堂で供されます。
献立は週単位で用意され、大食堂の壁に貼られています。
お風呂も部屋にはなく、大浴場を利用します。
外出は自由ですが、夜間の外出は、宿直の職員にチェックされます。
買い物は、店舗が遠いため、近隣のショッピングモールまで、週に1回マイクロバスで送迎をしてくれます。
病院との連携
ケアハウスのフロアの中央に、ステーションがあり、9時から5時までスタッフが常駐しています。
体調が悪いときなどは、ステーションに申し出ることで、近隣の病院と連絡を取ってくれます。
この施設では、特別養護老人ホームも併設されているので、症状が重い場合は、そちらの車椅子対応の自動車を利用することもできます。
なお、自立型のケアハウスでは、介護は目的としていません。
要支援レベルであれば、外部の業者が提供する居宅サービスを受けることができますが、要介護になると、別の施設へ移る必要があります。
大食堂に集まる入居者を見ていても、歩行器などの補助具を使っている人はいましたが、車イスを使っている人はいませんでした。
年収によっては、月7万円前後で入れる
ケアハウスの料金は、「事務費」「生活費」「管理費」の3つが基本になっています。
「事務費」は、本人の年収に応じて17段階に変わります。
「生活費」と「管理費」は、年収によらず一律です。
このケアハウスの場合、「事務費」「生活費」「管理費」の総額は、年収が150万円未満なら「69,090円」ですが、年収が300万円以上なら「146,290円」でした。
なんと、2倍以上の差があります。
ケアハウスは公的な施設という要素が強く、年収が少ない人ほど負担が少なくなっているのです。
年金が無いなどの理由で、年収が低い人にとって、月に7万円前後からという費用は魅力的な存在です。
なお、各部屋の電気代と水道代は、別途請求されます。
両方合わせて、1万円前後ということでした。
入居時の一時金なしも可能
このケアハウスでは、入居時の一時金はありません。
ただし、「管理費」を前納するという形で、ある程度のお金を預ける制度があります。
選択肢は「250万円」「130万円」「0円」で、前納した金額によって、毎月の「管理費」が変わります。
「0円」を選択すると、一時金なしで入居することができます。
ただし、前納しない場合は、退所時に必要な、部屋の片付けや、リフォームなどの費用を、自分で用意しておく必要があります。目安としては、30~40万円ぐらいです。
管理費を前納しておくと、これらの費用も含めて精算が行なわれ、残金が返却されます。
生活イメージはシェアハウスに近い
取材の時点では、入居者の8割は女性でした。
複数の入居者にインタビューしましたが、夫を亡くして一人暮らしになり、心配した子供が、ここを探してきたというパターンが多いようです。
みなさん、ケアハウスの生活に、おおむね満足していらっしゃいました。
特に、一人で暮らしていた状態よりも、会話が増えたことを利点として挙げる人が多かったです。
一方、不満点として挙がったのは、自分の部屋で火が使えないことと、自分の部屋に他の部屋の住民を呼べないことでした。
各部屋で火が使えないのは、火災を防ぐためです。
また、同じ入居者と話をする場合は食堂が推奨され、自分の部屋に招くことは禁止されています。
過剰に親密になることで、人間関係のトラブルが発生した経験から作られたルールということでした。
自分の部屋と共同空間を意識しながら生活するところは、シェアハウスや下宿屋をイメージすると分かりやすいでしょう。
ただ、高齢者施設という性格上、自室内でも一定の制約がある点が異なります。
ケアハウスの探し方
厚労省の統計によれば、ケアハウスは、全国に約2,000施設あります。
探すときは、「軽費老人ホーム+都道府県名」または「ケアハウス+都道府県名」で検索すると、その県の高齢者施設名簿が出てきます。
また、業界団体である全国軽費老人ホーム協議会のサイトでも検索できます。
老人ホーム検索サイトでは、「みんなの介護」が、ケアハウスの登録が多めです。
入所前に、ぜひ「お試し」を
今回紹介した施設は、あくまでもケアハウスの1つの例にすぎません。
同じ法規で縛られていても、運営する団体とスタッフの努力によって、各施設の雰囲気は大きく変わります。
実際に入居を検討する場合は、日中に短時間訪れるだけではなく、「お試し入所」などの名前で用意されている短期入所体験を利用して、何泊かすることをおすすめします。
入居されている方と、何度か食事を共にすると、そこで暮らせるかどうか把握することができるでしょう。