「厚生年金基金」に加入していた分の年金は、誰に請求すれば良いか

[2019/7/19 00:00]

無くなりつつある「厚生年金基金」という制度

「厚生年金基金」という制度があります。

1966年にできた制度ですが、いろいろな経緯があって、現在は廃止の方向に向かっています。

一時は千を超えていた基金が、いまでは8つしか残っていません。

しかし、過去には大企業を中心に、多くの人が「厚生年金基金」に加入していました。

そのため、すでに年金を受け取っている人や、これから年金を受け取る人のなかには、国からだけではなく、厚生年金基金を受け継いだ「企業年金連合会」から年金が受け取る人が少なくありません。
この記事では、「厚生年金基金」に加入していた人が、年金をどこから受け取ればよいのかを紹介します。

ちなみに、厚生年金基金は1カ月単位で管理されていますから、ごく短期間お勤めをした人も対象になります。

また、受け取る本人が確認できれば、書類を無くしていたり、勤めていた企業が倒産していても受け取れます。

せっかく、積み立てた厚生年金基金ですから、もらい忘れのないようにしてください。

もらい忘れのないように住所を登録する方法は、記事の最後で紹介しています。

会社員が受け取る年金を増やすための仕組みだった

最初に「厚生年金基金」について、簡単に紹介します。

「厚生年金基金」は、会社員が受け取る年金を増やすための仕組みでした。

「国民年金」と「厚生年金」に、「プラスアルファ部分」と呼ばれる年金を上乗せします。

「国民年金」を1階、「厚生年金」を2階とすると、「厚生年金基金」は3階に当たります。

これだけならば話が簡単なのですが、「厚生年金基金」には「代行部分」というものがありました。

厚生年金基金は、3階部分だけではなく、2階の「厚生年金」の部分も一部を、国の代わりに運用していたのです。

どうして、そんな面倒なことをするかというと、高度成長期からバブル期にかけては、国に任せるよりも、自分で資金を運用した方が有利だったのです。

基金は、代行部分も含めた大きな資金を投資に回し、生まれた余剰分を「プラスアルファ部分」として加入者に戻していたのです。

一般的な会社員の年金は「厚生年金」も含めて、「国」から支給されます。

それに対して、厚生年金基金に加入していた人は、「代行部分」と「プラスアルファ部分」は基金から受け取ることになっていました。

それ以外の部分は国から支給されます。

つまり、年金をくれるところが、2箇所に増える仕組みなのです。

出典:データを基に編集部が作成

解散への道のり

しかし、バブルは終わり、厚生年金基金の運用はうまく行かなくなります。

厚生年金基金から運用を委託されながら、運用に失敗して資金を消失させてしまった「AIJ投資顧問事件」を覚えている方もいらっしゃるでしょう。

これをきっかけにして、厚労省の指揮によって厚生年金基金は解散へと向かいます。

そして、その資産は「企業年金連合会」と「国」へ引き継がれていったのです。

基金から貰えるはずの分は、どこから貰う

このようにして、ごく一部を除き、厚生年金基金は解散してしまいました。

では、厚生年金基金が支給するはずだった、年金は、誰に請求すれば良いのでしょうか。

これがまた、一筋縄ではいきません。

加入していた「厚生年金基金」が解散したのが、2014年3月31日より前であれば、基金の資産はすべて「企業年金連合会」に移されています。

この場合は「代行部分」と「プラスアルファ部分」の両方が、企業年金連合会から支払われます。

基金が解散したのが、2014年4月1日以降の場合、「代行部分」の資産は国に、「プラスアルファ部分」の資産は「企業年金連合会」へと移されました。

この場合は「代行部分」は国から、「プラスアルファ部分」は企業年金連合会から支払われます。

出典:データを基に編集部が作成

「ねんきん定期便」だけでは分からない

「厚生年金基金」に加入していた人は、2つ注意すべきことがあります。

まず、厚生年金基金に加入していた人は、日本年金機構から届く「ねんきん定期便」以外に自分が受け取れる年金があります。

それを忘れて、「ねんきん定期便」に記された自分の年金額が想像よりも少ないことに驚く人が少なくありません。

その対策として、日本年金機構の「ねんきんネット」で「年金見込額試算」を行なうと「代行部分」も含まれた金額が分かります。

こちらの金額を利用して、将来の生活設計を行ないましょう。

ねんきんネットの「年金見込額試算」の例 出典:日本年金機構

住所を登録して、年金の書類が届くようにしておく

もう一つ、注意すべきことがあります。

厚生年金基金を引き継いだ企業年金連合会に、現在の住所が登録されていることを確認しましょう。

これは、企業年金連合会の「企業年金記録確認サービス」を使うと簡単です。

操作にあたっては、氏名や生年月日のほか、「基礎年金番号」が必要となります。あらかじめ「年金手帳」や「ねんきん定期便」などで、確認しておきましょう。

その上で、現在の住所を登録すれば、受け継がれている資産などについて郵送で通知がもらえます。
この通知が無事に受け取れれば、年金が受け取れる年齢になった時点で、企業年金連合会から申し込み用紙などが届きます。

これで、厚生年金基金に関する年金をもらい忘れることはありません。

[シニアガイド編集部]