今年になって増えている「早期希望退職」とは、どんな制度なのか

[2019/10/28 00:00]

「早期希望退職」が増加中

調査会社の東京商工リサーチによれば、2019年1月から9月において、「早期希望退職」を募集した上場企業は27社で、対象人員は10,342人でした。

会社数、対象人員とも、ここ数年にない伸びとしています。

では、「早期希望退職」とは、どんな制度なのでしょうか。

もし、あなたの会社で「早期希望退職」の募集があったときに、なにをもとにして退職するかどうかを判断すれば良いのでしょうか。

この記事では、早期希望退職について、その流れと特徴を紹介します。

出典:東京商工リサーチ

早期希望退職は、なぜ募集されるのか

「早期希望退職」が募集されるのは、会社の経営が傾いているときです。

人件費が高い、中高年の社員に退職してもらい、人件費を削減することが第一の目的です。

もう一つの目的が、社員の若返りです。

これからの変化に耐えられる体力と知力があり、人件費が安い若い社員を中心に据えることで、傾いた会社を変える(リストラクチャリング)することが目的なのです。

早期希望退職の手順

早期希望退職は、次のような順序で行なわれます。

  • 募集期間や人数、条件などの提示
  • 募集期間終了後に退職者を確定
  • 指定の日付に退職

早期希望退職者を募集するという提示は、社内メールや社員総会などで、社員全員に行なわれます。

この場合、提示されるのは次のような条件です。

  • 早期希望退職を募集する部署
  • 年齢指定がある場合は、その年令
  • 今回の募集に応募した場合の優遇条件

例えば、「部署を問わず、45歳以上の正社員、退職金を通常の1.5倍に優遇、会社費用にて転職支援会社によるコンサルタントあり、○月○日締切、退職日×月×日」という内容です。

応募条件や優遇内容は、企業によって、かなり異なります。

応募条件は年齢制限があることが多く、50代が中心ですが、最近では40代も珍しくありません。

優遇内容は、「退職金の増額」が柱となります。

50代後半ならば、特別加算金が「給与の24カ月分積み増し」という例もありました。

つまり、2年分の年収をプラスしてくれるわけです。

逆にいえば、ここで2年分の給与を出してでも、会社から出ていって欲しいと言っているのです。

なお、早期希望退職の応募が予定していた人数に達しなければ、二回目の募集をかけることもあります。

二回目も同じ条件のこともありますが、早く応募した人が損にならないように、条件が下がる場合もあります。

逆に、予定していた人数よりも応募数が多い場合は、そのまま全員退職を認めることが多いようです。

早期希望退職の優遇処置

早期希望退職に応じた場合のメリットは、会社が用意する「優遇処置」以外にもう一つあります。

それは、退職が「自己都合」ではなく「会社都合」になることです。

「会社都合」で退職すると、雇用保険の「特定受給資格者」に分類されます。

「特定受給資格者」は、失業手当が出るまでの待機期間がないため、退職後すぐに受給できます。

そして、受給期間も自己都合より長くなります。

例えば、20年以上勤務していた場合の受給期間は、自己都合では「150日」ですが、会社都合では年齢によって「240日」から「330日」となります。

通常よりも多い退職金と、すぐに出る失業手当によって、当面の生活を支えることができるでしょう。

早期希望退職に応ずるべきか

では、あなたの会社で「早期希望退職」の募集が行なわれた時に、それに応じるべきでしょうか。

まず言えることは、退職金や失業手当などが優遇されていたとしても、これから定年まで勤めたときの給与や退職金には及ばないことです。

つまり、これを機会に現役を引退できる人は、高齢で退職金が多い、一握りの人に限られています。

ほとんどの人は再就職をして働かなければ、残りの人生を支えることはできません。

まず、自分が、他の会社に転職するだけの、気力体力や知識があるのかどうか考えてみましょう。

しかし、「早期希望退職」による転職は、自己都合で退職する場合に比べれば恵まれていることも間違いありません。

以前から「転職」や「独立」を考えていた人にとっては、チャンスと言って良いでしょう。

「早期希望退職」に応じなかった場合でも、自分が定年になるまで会社があるかどうかわかりません。

もし、あったとしても現在の条件で雇用が続くかどうかはわかりません。

さらに言えば、もう一度「早期希望退職」の募集があったとして、今回のような条件になるかどうかはわかりません。

会社に居続けられないような状況に追いやられ、追い出されるように、今回よりも悪い条件で「早期希望退職」に応じなければならないかもしれないのです。

このように、「早期希望退職」に応じるにしても、応じないにしても、大きな賭けになることは間違いありません。

自分一人で判断せず、家族ともよく相談して、今後の進路を決定してください。

[シニアガイド編集部]