台風などで家を失くした人の住宅ローンを救う「被災ローン減免制度」

[2019/11/1 00:00]

住宅ローンを抱えた被災者を救う制度

2019年の台風15号や19号など、大きな自然災害によって自宅が被害を受けることが増えています。

特に住宅ローンを返済中の家が大破すると、住む家が無くなったのに、ローンだけが残ってしまいます。

このような被災者を救うための制度が、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」です。

長い名前なので、「被災ローン減免制度」と略して呼ばれることもあります。

これは、政府や銀行が中心となって設立された制度で、返済中のローンを整理することができます。

この記事では、「被災ローン減免制度」の使い方と特徴を紹介します。

「被災ローン減免制度」の利点

「被災ローン減免制度」は、簡単に言えば、一定の範囲を超える財産を差し出すことで、住宅ローンを整理する制度です。

つまり、自分の持っている財産の範囲で、ローンの一部を返済することで、残りを棒引きにしてくれます。

この制度を利用すると、ローンの対象である「家」が無くなってしまったのに、延々とローンの返済に苦しむということがなくなります。

ローンの整理については、法的な手続きが必要ですが、国の費用で弁護士などが協力して、手続きにあたってくれます。

「被災ローン減免制度」の対象

「被災ローン減免制度」が使えるのは、2015年9月2日以降に、国の災害救助法が適用された自然災害に限られます。

2019年について言えば、「8月の大雨」「台風15号」「台風19号」が対象となりました。

適用対象となった自然災害は、ガイドライン運営機関のページで確認できます。

「被災ローン減免制度」の申し込み

「被災ローン減免制度」の申し込みは、最も大きな金額のローンを借りている金融機関が窓口となります。

制度の利用を申し込むと、被災ローン減免制度の着手についての「同意書」が発行されます。

次に、地元の弁護士会などを通じて、弁護士などによる支援を要請します。

指定された専門家が「登録支援専門家」として作業を代行してくれます。

登録支援専門家に対する費用は負担する必要がありません。安心して依頼してください。

その後、債務の整理のために調査が行なわれ、最終的には、銀行との間に特定調停が結ばれます。

この調停が成立すれば、住宅ローンの負債は無くなります。

制度を利用する手順は、入口が「ローンを組んだ銀行」、次に「弁護士会などの専門家」とおぼえてください。

記事の最後に、主な手続きの流れを紹介した図を掲載していますので参照してください。

手元に残る財産の範囲

「被災ローン減免制度」は、住宅ローンを整理してくれる制度ですが、全く支払いが必要ないわけではありません。

制度を利用した際に、手元に残る財産の目安は次の通りです。

  • 最大500万円の現金と預金
  • 家財地震保険金 最大250万円
  • 被災者生活再建支援金、災害弔慰金や災害障害見舞金などの公的な援助
  • 義援金

つまり、あなたが500万円以上の現金や預金をもっている場合は、500万円を超える分は差し出す必要があります。

また、地震保険などの保険金が250万円を超える場合も、超えた分を差し出す必要があります。

具体的な条件については、それぞれの調停によって異なるので、依頼する「登録支援専門家」に相談してください。

新しくローンを借りることができる

一般に、ローンや借金の整理を自己破産などの方法で行なうと、信用情報登録機関に個人信用情報が登録されます。

いわゆる「ブラックリストに載る」という状態で、新たに借金をすることができなくなります。

しかし、「被災ローン減免制度」では、信用情報登録機関に個人信用情報が登録されません。

例えば、新たに住宅ローンを組んで、家を建て直すということができます。

これによって、被災した家と、立て直した家の2つの住宅ローンを抱えて生活に苦しむ「二重ローン問題」を避けることができるので、生活を再建するための負担が軽くなります。

知名度は低いが有効な制度

「被災ローン減免制度」は、成立してから日が浅いこともあって、知名度が低く、利用している人も多くありません。

2019年9月の時点で、登録支援専門家に手続支援を行なった件数が「1,085件」で、債務整理が成立した件数が「410件」です。

しかし、大きな自然災害によって家を失った人にとっては、大変有効な制度です。

制度を知らずに、二重ローン問題などで苦しむ前に、まずはローンを組んだ銀行などに相談してください。

「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」という制度名を出すと、話が通じやすいでしょう。

もし、銀行の窓口が知識不足などで、良い対応をしてくれない場合は、地元の弁護士会などに相談してみましょう。

被災された方々に心よりお見舞い申し上げるとともに、一日も早い復興をお祈りいたします。

付録:「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」の手続きの流れ

出典:全国銀行協会
[シニアガイド編集部]