新型コロナが介護に打撃。「デイサービス」と「ショートステイ」が苦境に
全国1,800以上の介護施設が回答
一般社団法人 全国介護事業者連盟が、「新型コロナウイルス感染症に関わる経営状況への影響調査」の結果を公開しています。
5月6日から12日にかけて行なわれたインターネット調査には、全国の1,862の介護事業者が回答しています。
9割以上の事業者が影響を感じている
新型コロナウイルス感染症が、経営にもたらした影響を聞いています。
「影響を受けている」は、全体の55.7%でした。
「影響を受ける可能性がある」も合わせると、90%以上の事業者が、コロナウイルスによる影響を感じています。
「デイサービス」と「ショートステイ」が苦境に
「影響を受けている」割合は、事業者の業種によって異なっています。
特に、「通所介護」と「ショートステイ」では、半分以上の事業者が「影響を受けている」と回答しています。
「通所介護」は「デイサービス」と呼ばれる介護サービスです。
在宅で生活している要介護者を迎え、入浴や食事などの介護と機能訓練を日帰りで行ないます。
「ショートステイ」は、正式には「短期入所生活介護」と呼ばれる介護サービスです。
在宅で生活している要介護者に、数日から1週間ほど入所してもらい、入浴や食事などの介護、機能訓練、日常生活の世話などを行ないます。
いずれも、特定の施設で集団で行なわれること、自動車による送迎を伴うことが特徴です。
つまり、密閉、密集、密接の「3密」になりやすい場面が多く、新型コロナウイルスの感染対策が取りにくい業種なのです。
多くの事業者が減収に見舞われている
では「通所介護」と「ショートステイ」では、具体的に、どれぐらい収入が減っているのでしょうか。
2020年の2月と4月の売上を比較し、どれぐらい減収になっているかを聞いています。
「通所介護」の場合、減収が10%未満で、ほとんど収入が変わっていない事業者は4割弱しかありません。
つまり、半分以上の事業者は、少なくとも10%以上の減収となっています。
「ショートステイ」はもっとひどく、ほとんど収入が変わっていない事業者は2割を切ります。
つまり、8割以上の事業者は、10%以上の減収となっています。
中には「80%以上100%未満」や「100%」の減収という例もあり、新型コロナウイルスによって売上が大きく落ち込んでいることが分かります。
コロナだけではない苦境の原因
「通所介護」と「ショートステイ」の苦境は、コロナウイルスだけが原因ではありません。
寄せられたコメントを見ると、他にも原因があることが分かります。
- 利用者減により5月末で事業所閉鎖
- 新規受入がストップしているため5月には影響がでる
- 高齢者施設での感染拡大との報道によりイメージの低下が心配
- 衛生用品関連の支出が増加
- アルコール、消毒用品、体温計が不足している
- 感染リスクが高い職員に対し危険手当を検討したいが実現は難しい
- 職員の採用が進まず厳しい運営状況
- 休業や時短に対する保証がない
これらのコメントからは、コロナウイルスによる「顧客の減少」や「衛生用品の不足」以外に、「収入の不足」と「人材不足」が介護施設の問題点であることが分かります。
もともと事業者としての体力が弱いところに、新型コロナウイルスによる顧客の減少が追い打ちをかけているのです。
介護というインフラが壊れてしまう
この調査は4月にも行なわれていますが、その時点に比べても、さらに厳しい状況に追い込まれていることが分かりました。
全国介護事業者連盟では、4月の調査報告書の中で「今後の課題」として、次の2点を挙げています。
- 高齢者介護サービスは利用者や家族等をはじめ地域を支える社会インフラであり、必要とされる限り利用者へのサービス提供は事業者の使命でもあることから、適切な感染予防対策の構築及び事業継続に向けた金融支援対策が急務である。
- 今後、さらに感染拡大が見込まれる中、要介護高齢者が本来必要なサービス提供を受けられないことによる心身への影響が懸念されていることから、現状のサービス提供の在り方と利用者の状態像の変化について中長期的な評価と分析が必要である。
介護施設に対する新型コロナウイルス感染症の影響は、しだいに大きくなっています。
介護というインフラが壊れないように、早期の対策が取られることが望まれます。