介護保険の「自己負担分」が重いときは、「医療費控除」で取り戻そう
自己負担1割でも、けっこう重い
家族の誰かが介護の対象となって、介護保険を使い始めると、毎月「自己負担分」のお金がかかります。
これは、介護保険で利用したサービスの使用料の一部を、「自己負担分」として支払うものです。
例えば、東京都23区で「要介護5」の場合、介護保険で使用できる在宅サービスは、1カ月に「39万8,000円」まで利用することができます。
これを、上限まで使い切っていた場合、自己負担の割合を「1割」とすると、毎月「3万9,800円」の「自己負担分」を払うことになります。
この金額を1年分に直すと「47万7,600円」ですから、軽い負担ではありません。
この「自己負担分」を軽くする手段はないものでしょうか。
いくつかある方法の中で、利用できる人が多いのは、「自己負担分」を「医療費控除」として申告し、所得税の還付を受けることです。
介護保険で受けるサービスのほとんどが対象
「医療費控除」というと、病院や薬局で使った「医療費」だけが対象のように感じてしまいますが、実は、介護保険のサービスの使用料も、ほとんどが医療費控除の対象となります。
例えば、自宅で受ける「居宅サービス」の代表である「訪問介護」を始め、デイサービスやショートステイなども対象になります。
「訪問入浴」のように、「他の居宅サービスと併せて利用する」という条件がついているものもありますが、「訪問介護」などと同じケアプランに入っていれば問題ありません。
また、施設へ入居している場合でも、「日常生活費」を除けば、ほとんどの費用を医療費控除に入れられます。
ただし、ここでいう「施設」は介護保険制度のもとにあるものに限られます。
例えば、「ケアハウス」や「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」は、これに該当しません。そのため、家賃などを医療費控除の対象にすることはできません。
自己負担分の1割ぐらいが戻ってくる
介護保険の「自己負担分」を、医療費控除として申告すると、どれぐらい税金が戻ってくるのでしょうか。
さきほど見た、「要介護5」の自己負担分である「47万7,600円」を、医療費控除として申告すると、申告する人の所得にもよりますが、1割ぐらい戻ってきます。
だいたい数万円返ってくると思えば良いでしょう。
所得税の確定申告をすれば、その結果は、住民税の計算にも反映されますから、翌年の住民税も同じぐらい安くなります。
これぐらい戻ってくるのであれば、手間をかけて医療費控除の還付申告をする価値があるでしょう。
「医療費控除」を受けるための申告の方法は、国税庁のこちらのページを参照してください。
医療費控除の還付申告は、5年間さかのぼって申告することができますから、過去の分についても申告しましょう。
介護保険の自己負担分の支払先は、1カ所ではなく、それぞれのサービスを提供している業者ごとに分かれています。
まず、介護保険関係の領収書を集めて、整理するところから始めましょう。
いろいろな制度があるので一度相談を
「医療費控除」は、収入が多く、所得税を払っている世帯にはありがたい制度です。
しかし、もともと収入が少なく、所得税を払っていなければ、利用することができません。
そのような場合には、「負担限度額認定証」という制度があります。
これは、低所得の方が、介護保険の施設に入所、またはショートステイを利用した場合に、その食費や居住費が軽減されるというものです。
一方、医療費と介護保険の使用料の両方が高額な場合は、「高額介護合算療養費」という制度があります。
こちらは、毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間の医療保険と介護保険の自己負担を合算した額が自己負担限度額を超えた場合、限度額を超えた分が支給されるというものです。
この2つは、いずれももよりの市区町村の介護保険窓口が担当となります。
これ以外にも、介護保険の負担を軽くするために、いろいろな方法が用意されています。
自己負担分の重さに悩んでいるときは、ぜひ窓口に相談してください。