「無利子・無担保融資」だけでは、中小企業の倒産が止まらない理由
融資を受けながら倒産してしまう企業が発生
新型コロナウイルス感染症の影響で、中小企業の業績が悪化しています。
この状況に対応するために、日本政策金融公庫などの政府系金融機関では「無利子・無担保融資」が用意されています。
通称を「ゼロゼロ融資」または「コロナ融資」という、この制度は、中小企業基盤整備機構が利子を補給し、信用保証協会が保証を行ないます。
そのため、実質的には、無利子、無担保でお金が借りられます。
返済期間は、設備資金であれば最長20年、運転資金なら最長15年と長く、無理のない返済計画が立てられます。
しかし、企業情報サービスの帝国データバンクによれば、「ゼロゼロ融資」を受けていながら、倒産してしまった企業が210件もありました。
どうして、融資を受けたばかりなのに、倒産してしまうのでしょうか。
帝国データバンクのレポートをもとに紹介します。
2年足らずで200件以上も倒産
「ゼロゼロ融資」が始まったのは、2020年5月でした。
しかし、早くも2020年7月には、融資を受けたのに倒産した企業が出てきました。
その後も増え続け、2022年2月までに「210件」ありました。
融資開始から2年も経っていないのに、200件以上も倒産してしまったのです。
業績不振で資金繰りができない
「ゼロゼロ融資」でも、融資の時点では企業の状態が調べられ、返済計画も立てられます。
それなのに、どうして、こんなにたくさんの企業が倒産してしまうのでしょう。
それは、何度も繰り返される「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」により、業績不振が長期に及び、融資された運転資金を使い切ってしまうのです。
そして、資金繰りに苦しんでいるうちに、一定の据え置き期間を過ぎ、ゼロゼロ融資の返済が始まります。
最終的には、返済に充てる資金もなく、事業を継続できずに倒産してしまう企業が多いのです。
飲食店やアパレルなどの小売業が多い
「ゼロゼロ融資」を受けながら倒産した企業の業種を見てみましょう。
もっとも多いのは「小売業」でした。
具体的には飲食店とアパレル(衣料)などが多くを占めます。
そして「製造業」と「卸売業」が、ほほ並んでいます。
こちらは食品関係が多く、飲食店が不振のため、そこに素材を提供している製造業と卸売業が巻き込まれた形です。
貸し出しが終わり、年内には返済が始まる
「ゼロゼロ融資」は、2022年3月末で、申請期限を迎えます。
そして、すでに融資された「ゼロゼロ融資」の多くは、今年中に返済が始まります。
しかし、3月中旬に至っても、18の都道府県には「まん延防止等重点措置」が行なわれています。
生活様式の自粛は広く行き渡り、飲食店や旅行業などへの影響が続いています。
新型コロナの流行が収まり、飲食店などの収益力がもとにもどらなければ、ゼロゼロ融資が返済できずに、事業を続けることをあきらめてしまう中小企業が続くことでしょう。
新型コロナの影響下で、事業をどうするべきか、「継続しない」という選択肢も含めて、結論を出すべき時期が迫っています。