「インボイス」制度に407万件の登録。個人事業主の駆け込み登録が続く
10月から始まった「インボイス制度」
2023年10月1日から、消費税のインボイス制度が始まりました。
この制度は、商業取引の際に、売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等が記された「適格請求書(インボイス)」を発行するものです。
インボイスを発行するためには、あらかじめ「登録事業者」として届け出をしておく必要があります。
個人事業主の駆け込み登録が続く
国税庁によれば、10月31日付けの「登録事業者」の登録件数は「406万5,405件」でした。
10月の新規登録数は約28万件で、制度が始まってから、あわてて登録した事業者が多いことが分かります。
さらに、調査会社の東京商工リサーチによれば、このうちの22万件が個人事業主でした。
登録するかどうかを迷っていた個人事業主が、制度が始まったことを受けて、駆け込みで登録した様子がうかがえます。
収入が少ない個人事業主は登録を迷う
個人事業主の場合、売上高が1,000万円以下であれば、消費税の納税義務が免除されます。
これを「免税事業者」と呼びます。
しかし、インボイス制度の「登録事業者」になってしまうと、「免税事業者」ではなくなり消費税の納税義務が発生します。
つまり、これまで収入となっていた消費税の分だけ利益が減ってしまうのです。
また、消費税の申告が必要となり、それに伴う事務手続きも発生します。
ただし、個人事業主と取引をしている会社にとっては、「免税事業者」になってもらわないと消費税の負担が増えてしまいます。
つまり、収入が少ない個人事業主にとっては、自分の利益を取るか、取引先の都合を優先するかの、いずれかを選ぶ必要があるのです。
これに対して、「激変緩和措置」によって企業側の消費税の負担を少なくするという対策が行なわれています。
また、公正取引委員会が「免税事業者でないことによって取引先を選別するべきではない」と警告したこともあって、企業側に大きな動きは出ていません。
ただし、今後、「激変緩和措置」が無くなれば、企業側が選別に走り、個人事業主が排除される可能性はあります。
当面の間、売上高が1,000万円以下の免税事業者は、取引先企業の意向を見守る必要があるでしょう。