「2100年に人口8,000万人」でも高い目標とされる、将来の人口減少の深刻さ
「2100年に人口8,000万人」が大目標
民間の有識者による「人口戦略会議」が、人口減少を踏まえた提言「人口ビジョン2100」を公開しました。
この提言が注目されているのは、「2100年に人口8,000万人」を目標と、それを実現するための政策を提唱していることです。
しかし、その政策の中身よりも、「人口8,000万人になっちゃうの」とか「8,000万人が目標ということは、現実はもっと少ないの」という、将来の人口減少の深刻さに注目が集まっています。
この記事では、「2100年に人口8,000万人」という数字の根拠を中心に、提言の内容を紹介します。
このまま行けば2100年の人口は「6,300万人」
今回の提言のもとになった、国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2100年の人口は5,100万人から9,100万人と大きな幅があります。
そして、出生と死亡が中位、つまり、もっともありそうな推計では「6,277万人」、ざっくりいうと「6,300万人」とされています。
2024年1月1日時点の人口は「1億2,409万人」ですから、ほぼ半分になると言って良いでしょう。
今回の提言は、この「6,300万人」という数字を「8,000万人」に引き上げようという意欲的な内容なのです。
人口減少が続く「6,300万人」の世界
では、2100年の人口が「6,300万人」と「8,000万人」のときでは、何が違うのでしょうか。
人口6,300万人の世界は、1人の女性が一生の間に生む子供の数を示す「合計特殊出生率」が1.36と低いままです。
65歳以上の人口の割合を示す高齢化率は、現在の約30%から40%になり、高い状態が続きます。
また、人手を補うために外国人に頼るため、現在2%台しかない外国人の割合が15.5%と高くなります。
つまり、人口の半分以上が高齢者と外国人になります。
出生率が低いことや、外国人の流入が変動することから、人口は安定せず、さらに減少が続きます。
一方、人口8,000万人の世界では、合計特殊出生率が2.07に回復しています。
高齢化率は30%で安定しています。
また、外国人に頼る割合が低いので、外国人割合は10%に留まります。
人口は安定しており、ほぼ8,000万人の状態で安定します。
つまり、人口6,300万人の世界は人口減少が続いていますが、人口8,000万人の世界は人口減少にブレーキがかかり、一応安定した状態になっているという違いがあるのです。
このまま行けば「2100年に5,100万人」の可能性も高い
今回の提言では、「人口8000万人国家」を目標として、つぎのような政策を提唱しています。
- 国民の意識の共有
- 若者、特に女性への支援
- 世代間の継承・連帯と「共同養育社会」づくり
具体的な政策は「人口ビジョン2100」に譲りますが、どれ一つとっても簡単とは言えない内容です。
逆に言えば、2100年の人口を、6,300万人から8,000万人にすることが、いかに難しいことであるかが分かります。
つまり、このままの状態が続けば、6,300万人の世界が来る可能性が高いと言えるでしょう。
さらに言えば、出生率が現状の1.18からさらに低下した1.13となって、「人口5,100万人の世界」が来る可能性もゼロではありません。
人口の46%が高齢者であり、外国人人口が15.6%に達する、そんな「人口5,100万人の世界」を避けるためには、現在の行動が必要とされているのです。