成人した子孫に結婚資金を残す「結婚・子育て支援信託」

[2015/9/24 00:01]

子供の結婚資金を一括して渡す

2015年3月に「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」という新しい制度ができました。これに沿って、信託銀行などから「結婚・子育て支援信託」という商品が発売されています。

これは、自分の手元にある現金を信託銀行などに預け、子や孫の結婚資金や子育て資金として使ってもらうという仕組みです。

大きな特徴は、3つあります。

  • お金を使う用途を結婚資金と子育て資金に限定し、信託銀行が管理してくれる。
  • 最大1,000万円まで預けられ、贈与税の対象とならない。
  • 贈与を受ける子や孫の年齢は、20歳以上50歳未満。

この商品は、まとまった金が手元にあるので、これを遺産の前払いのつもりで子孫に残したいという用途に向いた商品です。

また、贈与を受けた子孫は、結婚や子育てについての金銭的不安が解消され、結婚や出産に踏み切りやすくなるという利点があります。

「結婚・子育て支援信託」の使い方

「結婚・子育て支援信託」の使い方を手順を追って説明しましょう。

贈与する側は、信託銀行に普通預金口座を作り、贈与したい金額を入金します。預金残高のうち、一定の金額を指定して信託します。

信託できる金額は1,000万円まで。また、1人の子や孫について1口座のみ信託できます。複数の口座を作ったり、他の金融機関や店舗で別の口座を作ったりすることはできません。

贈与側の手続きは、これだけです。

なお、信託口座には利息が付かないのが一般的です、その代わり、事務手続きなどに手数料はかからないのが一般的です。

贈与を受ける側は、自分名義の信託通帳を受け取ります。信託の目的にあった支出があった場合、領収書等を添付して支払い請求を行ないます。

この場合、信託銀行は、支出が信託の目的に沿ったものであるかどうかをチェックし、内容が確認できた場合のみ支払いを行ないます。

不妊治療やベビーシッター代にも利用可能

「結婚・子育て支援信託」で利用可能な支出は、結婚関連と子育て関連に限られます。

結婚関連は300万円までに限られます。主な用途は、挙式費用、衣装代、披露宴費用、新居の家賃/礼金/敷金、引越し費用などです。結納、婚約指輪、新婚旅行などの代金は対象外です。

子育て関連は、費用に制限はありません。妊娠/出産では、不妊治療、妊婦健診費用、分娩費用などが該当します。育児は小学校に上がる前の未就学児童が対象で、医療費や保育園、幼稚園、ベビーシッター費用などが対象となります。

相続税対策にもなるが制限も

相続税対策の基本の1つは、手持ちの財産を減らすことです。具体的には、現金などの形で生前贈与することがよく行なわれます。

ただし、一般の預金口座にまとまった金額を入れて通帳を渡すと、用途が制限できず、無駄遣いされてしまう可能性があります。かといって、通帳を渡しておかないと生前贈与とみなされず、相続税の対象となります。また、年間に110万円を越える金額を贈与すると、贈与税の対象にもなります。

「結婚・子育て支援信託」を使うと、用途が制限できること、1度に1,000万円まで預けても贈与税の対象とならないという利点があります。

ただし、信託期間中に贈与する側が亡くなると、信託口座に残っていた未利用残高は相続税の対象となります。

また、贈与を受ける子が50歳になったり、孫が小学校に上がる前に使い切れなかった場合の未利用残高は贈与税の対象となります。

また、「結婚・子育て支援信託」は、2019年3月末が申し込み期限の期間限定商品です。制度がなくなったり、変更される場合もありますので、早めに検討しましょう。

【追記】2021年まで2年間延長されました。

贈与を受ける側の年齢に応じて2つの信託を使い分ける

この、「結婚・子育て支援信託」によく似た制度に「教育資金贈与信託」があります。

大きな違いは、「結婚・子育て支援信託」が結婚から孫が未就学児童までの子育てを目的としており、「教育資金贈与信託」が30歳までの教育資金を目的としていることです。

つまり、孫が小学校に上がるまでの「結婚・子育て支援信託」に対して、30歳まで使える「教育資金贈与信託」のほうが期限が長く、使い切れる可能性が高くなります。

一般的には、贈与を受ける側が、これから教育資金がかかる未成年であれば「教育資金贈与信託」を、成人であれば「結婚・子育て支援信託」が向いていますが、贈与を受ける側の状況も判断して選びましょう。

【お知らせ】この記事は2019年1月25日に内容が更新されました。

[シニアガイド編集部]