高齢者についての相談は、まず「地域包括支援センター」へ

[2015/10/29 00:55]

「地域包括支援センター」って何?

高齢者の介護について、地元の市区町村の窓口に相談に行くと、まず、制度や手続きについての説明がされます。

その後の、個別の事例に対する具体的な相談については、地域ごとに設置された「地域包括支援センター」を紹介されることが増えてきました。

しかし、「地域包括支援センター」といきなり言われても、なじみがない名前で、公営なのか民営なのかさえ判断できません。ここでは、地域包括支援センターの内容と利用方法を解説します。

介護保険制度の一端として設置

「地域包括支援センター」は、2006年の介護保険制度の改正で設けられた制度です。地域包括支援センターは、すべての介護保険事業者が設置しており、全国で4,000カ所以上あります。

その目的は、「高齢者の方がいつまでも住み慣れた地域で生活することができるよう、地域にある様々な資源(保健・医療・福祉)などを活用し、多面的な支援を行なう」ことにあります。

もう少し具体的に言うと、地元の市区町村が介護予防や相談窓口などの仕事を、地域ごとに切り分けた事業所です。自治体によっては、公立中学校の学区を想定した日常生活圏域に1カ所ずつを目標に設置しています。

厚生労働省では、地域包括支援センターを核とした地域包括ケアシステムの構築を、団塊の世代が75歳になる2025年をめどに目指しています。

高齢者についての相談は、なんでもOK

地域包括支援センターは、「介護・福祉・保健・医療などさまざまな面から総合的に支援することを目的」としています。

これでは具体的な業務が想像しにくいので、実際に、ある自治体によって「地域包括支援センター」の仕事として提供されているサービスを挙げてみましょう。

  1. 高齢者の日常生活の支援や介護に関するさまざまな相談
  2. 心身の状態に合わせた適切なサービスを継続的に提供できるよう支援
  3. 介護予防に関する相談や介護予防ケアプランの作成
  4. 高齢者の権利を守るための支援(虐待の防止、権利擁護事業等)
  5. 介護保険の相談や新規申請
  6. 紙おむつ、日常生活用具(シルバーカー・リハビリシューズ・杖・防水シーツ等)、高齢者すこやか訪問(ひとり暮らしの高齢者宅に週2回安否確認に行く)、特別養護老人ホーム等の申請受付

つまり、介護保険という前提にはあまりとらわれず、高齢者についての幅広い相談に応じています。

専門家のチームで幅広い相談に対応

別の自治体では、地域包括支援センターの仕事について次のように紹介しています。

介護予防マネジメント(保健師等を中心に対応)
予防給付、介護予防事業のマネジメント(計画)を作成し、要介護状態等となることを予防し、悪化の防止を図ります。
総合相談・支援(社会福祉士を中心に対応)
住民の各種相談に幅広く対応します。
権利擁護事業(社会福祉士を中心に対応)
高齢者に対する虐待の防止、早期発見その他の権利擁護のための事業を行います。
包括的・継続的マネジメント(主任ケアマネジャーを中心に対応)
ケアマネジャーの相談・助言、支援困難事例等への指導・助言などを行ないます。

つまり、「保健師」「社会福祉士」「主任ケアマネジャー」という専門家が、チームとして機能することで、幅広い問題に対応します。

また、地域包括支援センターが単独ですべてに対応するのではなく、すでにある行政機関や医療機関などが提供するサービスへつないで問題解決にあたります。つまり、ここに相談すれば、必要なサービス機関へ渡りをつけてくれるわけです。

「地域包括支援センターの業務イメージ」http://www.mhlw.go.jp/出典:厚生労働省

相談窓口として活用しよう

「地域包括支援センター」は、まだ新しい制度で、名前や機能が浸透していないこともあって、利用方法がわかりにくい施設です。

しかし、制度上は、行政や医療も含めた幅広い相談に応じられる体制が用意されています。

せっかく市区町村が用意している施設ですから、高齢者についての地元の相談窓口として積極的に利用しましょう。

ある自治体では次のように案内していますが、全国の地域包括支援センターについて当てはまります。

「高齢者について、どこに相談していいかわからない場合も、まずは、各市町村の地域包括支援センターにご相談ください」

[シニアガイド編集部]