国民年金を60歳から繰上げ支給すると金額が3割減る

[2015/11/11 03:36]

4割近くの人が繰上げ支給を選択している

国民年金(老齢基礎年金)は、20歳から60歳までの40年間保険料を納付し、65歳から死亡するまで年金が貰える制度です。

ただし、届け出をすることで、60歳から繰上げ支給してもらうことができます。逆に、70歳まで支給を繰り下げてもらうこともできます。

厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業の概況」(平成26年度)によれば、繰上げ支給をしている人の割合は、37.1%に及びます。年々、減少傾向にはありますが、年金支給者の4割弱が繰り上げ支給しているのです。

なお、本来の年齢で受給開始した人は61.6%、繰り下げ支給している人は1.3%でした。

繰上げ支給のデメリット

繰上げ支給の最大のメリットは、早く年金が手にできることです。

とくに、60歳から65歳は、働くことができても、収入が少なくなる可能性が高いので、現金を手にできる繰上げ支給はありがたい制度です。

しかし、繰上げ支給にはデメリットもあります。最大のデメリットは、このあとで説明する年金の減額ですが、ほかにも次のような制約があります。

  • 障害基礎年金を請求することができない。
  • 寡婦年金が支給されない。既に寡婦年金を受給していても権利がなくなる。
  • 65歳になるまで遺族厚生年金・遺族共済年金が併給できない。

障害基礎年金は、後遺障害をカバーする年金です。ペースメーカー、人工透析、在宅酸素などの病気による障害も対象になります。自分の健康状態なども考慮して判断してください。

60歳から繰上げ支給すると年金が3割減る

繰り上げ支給をすると、早い時期から年金が貰える代わりに、一定の割合で減額されます。逆に支給を繰り下げると、一定の割合で増額されます。

減額の割合は、「0.5%×繰り上げた月数」、増額の割合は「0.7%×繰り下げた月数」で計算されます。

こう言われてもピンとこないので、計算してみました。65歳支給時の金額は、40年間納付した満額の金額です。


    年齢 支給率 年金額 月額換算額
    60歳 70.0% 546,070円 45,506円
    61歳 76.0% 592,876円 49,406円
    62歳 82.0% 639,682円 53,307円
    63歳 88.0% 686,488円 57,207円
    64歳 94.0% 733,294円 61,108円
    65歳 100.0% 780,100円 65,008円
    66歳 108.4% 845,628円 70,469円
    67歳 116.8% 911,157円 75,929円
    68歳 125.2% 976,685円 81,390円
    69歳 133.6% 1,042,214円 86,851円
    70歳 142.0% 1,107,742円 92,311円

なんと、60歳支給開始と、70歳支給開始では、年金額が2倍も違います。

なお、支給が始まるときに確定した金額は、一生変わりません。つまり、繰り上げ支給した人は、どこかの時点でしなかった人よりも総支給額が少なくなります。

老齢基礎年金の繰り上げと繰り下げシミュレーション

この関係をグラフにすると、上のようになります。

横軸は年齢で、縦軸は65歳から普通にもらったときの金額を1としたときの倍率です。

ざっと計算してみると、60歳に支給開始した人の総支給額は、72歳の時点で、65歳支給開始の人に抜かれます。

また、65歳支給開始の人は、82歳の時点で、70歳支給開始の人に抜かれます。

支給総額だけを考えると、72歳までなら60歳支給が、82歳までなら65歳支給が、それ以上長生きするなら75歳支給が一番多くなります。

なお、 老齢基礎年金を繰下げすると「付加年金」も繰下げ支給されます。増額率は老齢基礎年金と同じです。

60歳の時点で判断すれば良い

厚生労働省の「年金制度基礎調査」によれば、繰上げ支給にした理由は、男性では「年金を繰り上げないと生活出来なかったため」が、女性は「減額されても、早く受給する方が得だと思ったため」が多くなっています。この2つに、「生活の足しにしたかったため」を加えた3つが、繰上げ支給の主な理由となっています。

また、週刊誌などで年金の繰上げ支給を勧める記事の場合、「年金制度が破綻する前に、少しでも現金を手にしておこう」とか「これから来るインフレの前に現金を手に入れよう」という理由が語られます。

ここまで来ると、人それぞれの信条にも係るものなので、ご自分で判断していただくしかありません。

ただ、年金制度がある理由の1つは、「長生き」というリスクに備えることです。ある程度の年齢に達し、労働して対価を得ることができなくなり、貯金も尽きた時にあてになるのが年金制度なのです。

日本人の平均寿命は、女性が86.83歳、男性が80.50歳で、いずれも80歳を越えています。65歳まで働くことができたとしても、まだ長い余生が残っています。

それを考えると、60歳から65歳までの期間に収入が期待できるのであれば、繰り上げ支給をしないで将来の年金額を増やすという選択も正しいでしょう。

実際に、新たに年金をもらい始める人に限れば、繰上げ支給を選択している人は約1割に留まっています。

繰上げ支給の申請は、60歳の誕生日を迎える3カ月前の届く「裁定請求書」の提出と一緒に行ないます。つまり、60歳の時点で、支給開始時期を決定できます。その時点の経済状況や健康状態、厚生年金や民間年金保険の加入状況などを総合的に見て判断しましょう。

[シニアガイド編集部]