継続雇用された高齢者の賃金は、定年時の5~7割程度
継続雇用制度を導入した951社の実態
「60歳を過ぎた高齢者が、同じ会社に継続されて雇用された場合、定年時の賃金に比べて5~7割程度の収入になる」という調査結果が出ています。
これは、東京都が2012年に行なった「高年齢者の継続雇用に関する実態調査」によるものです。この調査は郵送で行なわれ、社員数が951社が回答を寄せています。少し前の調査ですが、信頼できる調査結果と見てよいでしょう。
高齢者雇用制度の実態から順に、内容を紹介します。なお、図版の出典も、すべて調査報告書に依っています。
高齢者への対応は「継続雇用制度」の導入が主流
まず、企業が高齢者の再雇用にどういう制度を用意しているのか見ていきましょう。
企業が採用している制度は、「継続雇用制度の導入」が8割以上で主流となっています。一方、「定年の引き上げ」「定年制度の廃止」を行なっている企業は少数派です。
また、企業の9割は、高齢者が定年を迎えて継続雇用になる際に、なんらかの基準を設けています。
調査によれば、その基準は「働く意思・意欲があること」が一番多く、「健康上支障がないこと」「出勤率、勤務態度」「会社が提示する職務内容に合意できること」などが上位に入っています。
雇用を継続しているのは6割強
では、定年後に雇用を継続している人は、全体に対して、どれぐらいの比率なのでしょう。
調査によれば、定年に到達した6,503人のうち、継続して雇用された人の割合は65.8%でした。
つまり、3割ちょっとの人は定年をきっかけに退職しています。
退職した理由で一番多いのは、「継続雇用を希望しなかった」でした。
契約期間は1年が主流
定年を迎えて継続雇用になった場合、正社員ではなく、契約社員などの期限のある契約となるのが主流です。
そして、7割の会社では、契約の更新は「65歳」までとなっています。
60歳で定年を迎え、継続して雇用される場合でも、働けるのは65歳までと考えた方が良いでしょう。
また、7割の会社では、契約の期限は「1年」です。期限が5年の会社は、1割に留まっています。つまり、60歳以降は1年単位で契約を結び直すという形になると思っていた方が良いでしょう。
少数ですが、契約期間が「6カ月」という例もあります。契約期間が短いからといって、契約が更新されにくいわけではありませんが、なんとなく腰が落ち着かない感じはするでしょう。
労働時間は社員並みだが、賃金は少ない
次に、継続して雇用された場合の、契約で定められた所定労働時間を見てみましょう。
調査によれば、「40時間」という会社が4割を占めています。全体を見ると、「30時間~40時間未満」が半数以上となっています。
正社員の所定労働時間は一般には40時間です。つまり、継続して雇用された場合でも、労働時間に関しては社員と同じか、やや短いぐらいで、あまり差はありません。
しかし、継続して雇用された場合の賃金は、社員並みとは行きません。定年時の賃金に対して、「5割未満」から「5~7割未満」となっている会社が多くなっています。
定年時と同じ賃金の会社は1割もありません。
つまり、定年後に継続して雇用された場合、労働時間は社員並みですが、賃金については下がると覚悟しましょう。少なくとも3割減、たぶん5割減になると思っていれば間違いありません。
継続雇用制度の実態はなかなか厳しい
ここまでの内容を、箇条書きにまとめてみましょう。
- 高齢者の雇用にあたって,定年を延長している企業は少なく、継続雇用制度が導入されている
- 定年を迎えた人の65%が継続雇用される
- 雇用契約は1年単位で更新され、契約は65歳までとするところが多い
- 労働時間は社員並みか少し短い程度
- 賃金は定年退職時の5~7割が目安
結論としては、「制度は用意されており、働く体力と意欲を見せれば65歳まで働くことはできる。ただし、契約は1年契約で、賃金は定年時の5割まで減ることもある」ということでしょう。
この内容は、なかなか厳しいものがあります。
60歳以降の生活設計を考える際には、定年を迎えた後に勤め続けても、ある程度は賃金が下がることを前提にしましょう。