介護保険の要支援対応サービスが大きく変わる「介護予防・日常生活支援総合事業」

[2016/2/5 00:04]

新制度の実施期限が来年度に迫る

介護保険を使う際に受ける要介護認定の判定には、大きく「要支援」と「要介護」があります。

「要支援」は手助けは必要なものの改善する可能性が見込まれるという判定で、「介護予防サービス」を受けることができます。

これまで、介護予防サービスについては、国の介護保険制度によって内容や報酬が決定されていました。

しかし、2017年4月までには、この制度が変わります。新しい制度は「介護予防・日常生活支援総合事業」と言い、「新総合事業」や「総合事業」と呼ばれます。

新総合事業では、市区町村の裁量範囲が広くなり、65歳以上であれば介護認定を受けていない人も対象となります。

新制度によって、何が変わるのか見ていきましょう。

「訪問介護」と「通所介護」が市区町村へ移る

新総合事業では、介護保険の「訪問介護」と「通所介護」のサービスが市町村の地域支援事業に移行します。これを「介護予防・生活支援サービス事業」と言います。

これによって、市区町村が自分たちの環境に応じたサービスを作ることが可能になります。これまでの国の基準で統一されていた状態に比べて裁量の範囲が広くなります。

また、サービスを提供するのも、これまでの介護サービス業者だけではなく、NPO法人やボランティアなどの協力を仰ぐことができます。サービスの価格も、ある程度まで市区町村が決めることができます。

例えば、NPOなどによる掃除や洗濯、栄養改善を目的とした食事の提供などのサービスや、ボランティアによる見守りやゴミ出しなどのサービスも可能となります。

訪問介護と通所介護が市区町村に移り、地区の事情に合わせたサービスがやりやすくなる

「非該当」の人もサービスが受けやすくなる

新総合事業では、各地域にある「地域包括支援センター」に「基本チェックリスト」が配置されます。

この基本チェックリストによる判定を受けると、要介護認定が「非該当」の人でも、身体の状況によっては「介護予防ケアマネージメント」を受けて、「介護予防・生活支援サービス事業」のサービスが受けられます。

つまり、要介護認定が非該当であっても、一定のサービスが受けやすくなります。

また、要介護認定に比べて手順が簡単で、短時間で判定できますから、急に身体状況が悪化した場合などにも対応しやすくなるでしょう。

要介護認定で「非該当」になっても、新総合事業のサービスが受けられる

リハビリテーション専門職が関わりやすくなる

市区町村は、65歳以上のひとすべてを対象とした「一般介護予防事業」も行ないます。

これは、高齢者が日常的に介護予防に取り組めるように、行われる介護予防教室や、筋力トレーニング教室など、予防や啓発を目的とした事業です。

特に「地域リハビリテーション活動支援事業」が新しく追加され、リハビリテーション専門職の人が介護サービスに関わりやすくなります。

新しく追加される「地域リハビリテーション活動支援事業」

介護に関する相談は、自分の地域の「地域包括支援センター」へ

新事業への移行期間は、2017年4月が期限となっています。

2016年2月の時点で、移行が終わっている市区町村は半分もありません。

すべての市区町村で新総合事業が開始され、自分たちの地域に適した新しいサービスが開始される体制ができるまでには、数年かかるでしょう。

新総合事業の全体の構成。緩い基準の新しいサービスが取り入れやすくなっている

したがって、現状では次のことだけ頭に入れておけば良いでしょう。

  • 全国で共通だったサービスが、地域の事情に合わせた独自のものになる可能性がある
  • これまで市区町村単位で行われてきた補助事業なども、この制度と統合される可能性がある
  • NPO法人やボランティアなどの力を取り入れる体制ができたことで、新しいサービスが提供される可能性がある
  • 「基本チェックリスト」ができたことで、介護に関する相談先は「地域包括支援センター」が主流になる

とりあえず、“要支援でサービスを受けている人は、サービス名や内容が変更になる可能性がある”、“介護に関する相談は、自分の地域の「地域包括支援センター」へ行く”という2つのことだけは覚えておきましょう。

[シニアガイド編集部]