家庭での高齢者虐待は男性によるものが過半数
厚労省による高齢者虐待の調査
2016年2月5日に厚生労働省から、高齢者の虐待についての調査結果が発表されました。
この調査については、養介護施設の従業員による虐待件数の増加だけを取り上げた報道が多かったのですが、実は、施設よりも家庭内の虐待の方が件数が多いのです。
ここでは、家庭での実態について紹介しましょう。図版類の出典は調査報告書に依ります。
家庭における虐待は約1万5千件
調査対象期間である平成26年度(2014年度)に、家庭での虐待ではないかという通報は25,791件でした。そのうち、虐待と判断された件数は15,739件です。
参考までに、養介護施設の従業員による虐待の報告は1,120件、虐待と判断されたのは300件でした。家庭のほうが、ずっと多いことがわかります。
虐待を報告した人は、「ケアマネージャー」が30.0%、「警察」が15.2%、「家族・親族」が10.4%でした。
やはり、家族以外の第三者が介入しないと、表に表れにくいことがわかります。
ほとんどの例では、報告の翌日には実態調査が入り、対策が行なわれています。
虐待者は男性のことが多い
介護を受けている人と、虐待した人との関係では、「息子」が40.3%、「夫」が19.6%、「娘」が17.1%、「息子の配偶者」が5.2%、「妻」が5.1%でした。
男女比では、圧倒的に男性が、年齢では若いほうが虐待に至りやすい傾向にあります。
この傾向は、養介護施設の従業員でも共通で、比較的若い男性職員による案件が多くなっています。
虐待の理由は「介護疲れ」
虐待に至った理由は、「ストレス・介護疲れ」が23.4%、「虐待する側の障害や疾病」が22.2%、「経済的問題」が16.1%でした。
虐待の内容は、「身体的虐待」が66.9%と半数を超えます。「心理的虐待」が42.1%、「介護等放棄」が22.1%、「経済的虐待」が20.9%で続きます。複数の要素が重なっている案件があるため、合計は100%を超えます。
要介護度が低いと「身体的虐待」と「心理的虐待」が多く、要介護度が高いと「介護等放棄」が増える傾向にあります。
また、高齢者が認知症を患っている場合にも「介護等放棄」が増える傾向にあります。
介護をするときは、介護保険を受けよう
介護を受けている人が、介護保険サービスを受けている場合は、虐待の深刻さが低い傾向がありました。
また、介護サービスを受けている場合は、ケアマネージャーによる通報例も多くなっています。
以上のことから、自宅で介護を行なう場合は、できるだけ介護保険サービスを受けた方が良いことがわかります。
長期に渡る介護によるストレスや介護疲れは、一人では支えきれません。介護関係者などの第三者が出入りして、介護に介入しやすい状況を作りましょう
なお、高齢者に関しての相談窓口が分からない場合は、全国に配置されている「地域包括支援センター」で相談できます。