70歳以上の離婚が、この15年で2倍以上に増えている
「熟年離婚」は増えているか
熟年の夫婦が離婚する、いわゆる「熟年離婚」が、テレビや雑誌で話題になることがあります。
例えば男性週刊誌などでは、「夫の定年を機に、妻から離婚を言い出された」「2008年から年金分割が簡単になったので離婚が増えた」などのストーリーで語られることが多く、熟年離婚が増えている印象を与えています。
では、実際に熟年離婚が増えているのかどうか、国の調査資料を基にしてグラフ化してみました。
実は50歳以上の離婚件数は減っている
上のグラフは、離婚時に男性の年齢が50歳以上だった件数の変化です。
年齢は50歳から5歳ごとに区切ってあり、50~54歳が色が濃く、年齢が上がると色が薄くなっています。
ただし、定年時期にあたる「60~64歳」は、区別しやすいように周囲より濃い青になっています。
横軸は、2000年までは5年刻み、2000年からは1年刻みになっています。
パッと見てわかるのは、2000年までは急増していた50歳以上の離婚件数が、2003年をピークにして減りつつあることです。
実は、これは50歳以上に限らず、離婚件数全体でも同じ傾向で、ここ数年は離婚件数が減りつつあります。
ただし、60~64歳についてみると、2008年からは少し増えており、定年前後に離婚する人が多いことがわかります。年金分割が簡単になったことも影響しているのかもしれません。
次に、離婚時に女性の年齢が50歳以上だった件数の変化です。
こちらも、男性のグラフとほぼおなじで、やや減少の傾向です。
つまり、男女とも50歳以上の離婚件数は、あまり増えていないのです。
70歳以上の離婚は2倍以上も増えている
しかし、50歳以上の離婚が減っているからと言って、安心してはいけません。
実は、70歳以上に限ってみると、離婚件数が増えているのです。
まず、男性のグラフから見てみましょう。
70歳を過ぎてからの離婚は、2000年には1,436件でしたが、2014年には3,435件に増えています。
実に2.3倍に増えています。急増と言って良いでしょう。
離婚件数全体や、50歳以上の離婚が減っているなかで、70歳以上のシニアの「高齢離婚」が増えていることは、注目すべき現象と言えるでしょう。
念のため、同じ条件の女性のグラフを見ても、2000年には695件だったのが、2014年には1,946件に増えています。
こちらは2.8倍の増加です。
なお、女性のほうが件数が少ないのは、離婚した夫婦の多くは女性のほうが年下で、離婚時の年齢が若いためです。そのため、ある年齢以上という区切り方をすると、女性のほうが離婚件数が少なくなります。
寿命が伸びたことも高齢離婚の一因か
70歳以上の離婚が増えて理由の1つは、平均寿命が伸びたことでしょう。
日本人の平均寿命は、男性が80.50歳、女性が86.83歳に達しています。
実際の余命に近い、平均余命はもっと長く、男性が70歳であれば15.49年、80歳でも8.79年あります。
女性の平均余命はさらに長く、70歳であれば19.81年、80歳でも11.52年あります。
これだけ余命があると、「十年以上も我慢するよりは、いっそ離婚を」と考えることが増えるでしょう。また、70歳や80歳で離婚しても、そこから長い人生があるのです。
年金生活に入ってからの離婚は、年金を始めとして、お互いの生活にとって大きな影響があります。
人生の最終期に、離婚という大きな障害を招かないように努力をしましょう。