50歳まで未婚だったら、ずっと単身のつもりで将来の準備を始めよう
厚生年金は世帯単位の世界観で作られている
サラリーマンが65歳以降に受給する「老齢厚生年金」は、もともとは世帯単位で作られた年金でした。
その影響は今でも残っていて、支給額のモデルは、勤労男性と専業主婦の組み合わせで計算されています。
しかし、結婚に対する動向は様変わりしていて、今では「結婚しない」という選択も当たり前のものとなっています。
ただ、単身者が、年金生活に入ったときに支給額にはある程度の上限があります。
「50歳になった単身者は、結婚している人以上に真剣に自分の将来について準備を始めましょう」というのが、この記事の趣旨です。
現在の未婚状況も含めて見ていきましょう。
男性の20%、女性の10%は未婚
上のグラフは「生涯未婚率」の推移です。
1990年から「生涯未婚率」は上昇しています。「結婚しない」という選択が当たり前になったことの表れです。
2010年には、男性の「20.14%」、女性の「10.61%」が生涯未婚となっています。
「生涯未婚率」は、人口の推移などを見る時に基準となる数字です。
しかし、その人が本当に一生未婚だったかどうかを知ることは難しいので、普通は「50歳までに未婚だった人の比率」を使用しています。
なぜ、50歳が基準かというと、それ以降に結婚する初婚者が少ないからです。
これもグラフで見てみましょう。
男女とも「25~29歳」がピークとなっており、50歳以降はとても低い比率となっています。
「50歳まで未婚だったら、生涯結婚しない」という生涯未婚率の根拠は正しそうです。
老齢厚生年金の支給額の実績
サラリーマンが加入している「老齢厚生年金」は、以前は世帯単位で運営されていた古い制度なので、生涯を単身で過ごす場合には支給額が不足しがちです。
実際の金額を見てみましょう。
老齢厚生年金は、毎月の給与などによって変化する「報酬比例部分」があるため、年金の支給額は人によって異なります。
そこで、一定の条件をつけた世帯単位のモデルケースが示されています。
具体的には、平成28年度(2016年度)では、月に「221,504円」となっています。
このモデルケースは、40年間勤め上げた夫の老齢厚生年金と、専業主婦で40年間未納がない妻の老齢基礎年金の組み合わせで計算されています。
つまり、夫の分(約15万円)に、妻の分(約7万円)の合計です。
月に22万円ならば、少しきついながら、なんとか夫婦の世帯が生活できる水準でしょうか。
しかし、単身者は妻の分がありませんから、支給額は実績値で「147,513円」になります。
さらに、支給額には男女差もあります。
男性が「165,450円」に対して、女性は「102,252円」となっています。
厚生年金は加入期間や報酬額によって支給額を計算するため、男女の支給額に差がつきやすいのです。
いずれにしても、単身者の場合、老齢厚生年金だけで生活を送るのは厳しいと言えるでしょう。
老齢厚生年金だけに頼らず、自分自身で生活費を上積みをする仕組みを準備する必要があります。
50歳が将来に備えるラストチャンス
現在、50歳であれば、雇用が65歳まで続くとすれば、あと15年は、年金額を上乗せできる可能性があります。
次の3つの手順で、将来の準備を進めましょう。
- 50歳の誕生月に届く「ねんきん定期便」で、自分の年金受給額をチェックする。厚生年金基金に加入した履歴のある人は「ねんきんネット」で確認すると、より正確な金額がわかる
- 会社が用意している企業年金制度があれば利用する。企業年金制度がない場合は「個人型確定拠出年金」など、年金に上乗せできる制度に自分で加入する
- 生命保険については、50歳を期に「更新」が行なわれて保険料が高くなる契約になっていることが多いので、加入自体を再検討して、預金や年金に回せないか検討する。単身者の場合、家族のための大きな保障はいらないので、預金や県民共済などで代替できることも多い
50歳は、将来の年金生活のための「何か」ができる最後のタイミングです。
少なくとも、あと10年~15年ある現役生活中は、将来に備えての準備を進めましょう。