フランスベッドが発表した“転ばない車いす”の仕組み
人が転ばない安全な車いす「転ばなイス」
フランスベッドが5月10日に発売する、転倒を予防する新機能車いす「転ばなイス」を見てきました。
最初に、車いすで起きやすい事故の例を見て、次に、「転ばなイス」がどうやって、それを防いでいるのかを紹介しましょう。
車いすには操作が必要である
テレビのドラマなどで車いすが出てくるシーンでは、車いすに乗っている人は、あまり操作をしているように見えません。
介助をする人が側に居ない時に、車輪についている手すりを手で押して前に進んでいる場面ぐらいしか出てきません。
しかし、車いすには、乗っている人が行なわなければならない重要な操作が2つあります。
- 止まっているときに、ブレーキレバーを引いて、車いすを固定する
- 乗っている時は、足をフットレスト(足乗せ板)に載せる。止まっているときは、フットレストを跳ね上げてから立つ
車いすによるケガの大半は、この2つの操作を忘れたことによって起きるのです。
では、どういう事故が起きるか見てみましょう。
- ブレーキレバーをの操作忘れ
- ブレーキレバーを操作し忘れると、手すりに手をついて立ち上がろうとすると、車いすが後ろに行ってしまい、後ろに転んでしまう
- フットレストの上げ忘れ
- フットレストを上げ忘れると、フットレストを踏んだまま立ち上がってしまい、車いすのバランスが崩れて、前に転んでしまう
今回の「転ばなイス」は、ブレーキレバーとフットレストの操作を忘れたときでも、事故が起こりにくい構造になっています。
1本のベルトで、人の動きを知る
では、「ブレーキし忘れによる転倒」を防ぐ方法を見てみましょう。
「転ばなイス」では、乗っている人が立ち上がると、スプリングの力でブレーキレバーが引かれて、自動的にブレーキがかかります。
「フットレスト上げ忘れによる転倒」を防ぐ方法も同様です。人がシートから立ち上がると、それを感知してフットサポートの部分が床まで下がるようになります。
面白いのは、人が立ち上がったということを感知する方法です。人が座るシートのクッションの下にベルトが渡されていて、そのベルトがゆるむと、人が立ち上がったと判断しています。
こういう人の動きを判断する製品では、何かのセンサーを使うことが多いのですが、「転ばなイス」では、ベルトとそれに連動するリンク機構で実現しています。そのため、電源がいらず、メンテナンスの手間もかからなくなっています。
また、構造が簡単なので、通常の車いすと同じように、使わないときは折りたたむこともできます。
一見、ローテクな仕組みですが、実際に車いすを使用している現場に合わせた構造であることがわかります。
なお、リンク機構はいくつかの金属部品を関節などで組み合わせた仕組みと思ってください。フランスベッドの主力商品であるベッドにはリンク機構が多数使われています。「転ばなイス」はお家芸を生かした製品でもあるのです。
介助の手間を減らすことにもつながる
車いすのブレーキもフットレストも、簡単な操作ではありますが、高齢者にとっては覚えることが難しい操作でもあります。
「転ばなイス」のように、車いすが自動的に判断して、安全を確保してくれるのであれば、これにこしたことはありません。
また、介護施設では、車いすから降りるときの事故防止の介助に、多くの人手が割かれています。
そういう施設でも導入が進めば、その分の人手を他の仕事に振り向けることができるでしょう。
「転ばなイス」の販売価格は178,000円で、月額レンタル価格は7,000円/月です。
介護保険レンタル適用なので、利用者負担1割の場合は700円/月、利用者負担2割の場合は1,400円/月で利用できます。