日本で起業した人の32.4%は60歳以上!?

[2016/4/29 00:00]

シニア起業は30年前の4倍!?

「定年を迎えたら起業して、第二の人生は自分で選んだ仕事で、自分で決めた定年まで働きましょう。シニア起業は30年前の4倍に増えています」

という主旨で、シニア起業を煽る記事がありました。

シニア起業自体は、悪いことではないのですが、なんとなく違和感を感じます。

30年前に比べてシニア層の起業意欲が4倍にも高まっているとは思えないのです。

起業している人の32.4%は「60歳以上」

記事によれば、データの出典は「2014年版 中小企業白書」です。

さっそく白書にあたってみると、このデータは「起業家」の年齢構成を示したもので、もともとは総務省の「就業構造基本調査」という調査によるものです。

わかりやすいように、データをグラフにしてみましょう。

「起業家」の年齢構成の推移

たしかに、一番濃い色で示した「60歳以上」が占める割合が増え続けています。

30年前の1982年は「8.1%」だったものが、2012年には「32.4%」に増えていますから、「30年前の4倍」という数字は、嘘ではありません。

中小企業白書では、このように、シニア層が増え続けている理由について次のように述べています。

シニア層は若者に比べて自己資金が豊富であり、社会経験を蓄積しているとともに、退職後も何らかの形で働き続けたいと希望する者が多い。その一つの選択肢として、起業を選ぶ者が存在するため、シニア層は起業の動機が明確であり、かつ、その意欲も高いと推察される。

その起業は、希望したものなのか

しかし、「2014年版 中小企業白書」には、もう1つの数字がありました。

こちらは、「起業家」ではなく「起業希望者」の年齢構成です。

これもグラフにしてみましょう。

「起業希望者」の年齢構成の推移

グラフを見ると、「60歳以上」の比率は2012年に15.5%しかありません。

また、増加の傾向はありますが、30年前の4倍にはなっていません。

なぜ、さきほどのグラフと、こんなに差が付いているのでしょう。

どうも、2つのグラフのもとになった、もともとのデータに原因があるようです。

ここで言う「起業家」は、『過去1年間に職を変えた又は新たに職についた者のうち、現在は自営業主(内職者を除く)となっている者』を指しています。

言い換えると、「会社を辞めたあとで、結果として自営業として起業した人」です。

一方、「起業希望者」は、『有業者の転職希望者のうち、「自分で事業を起こしたい」、又は、無業者のうち、「自分で事業を起こしたい」と回答した者』を指します。

言い換えると、「自分で起業したいと思っている人」です。

つまり、60歳以上の人で、「自分で起業したいと思っている人」は15.5%しかいないが、「結果として起業した人」は32.4%に増えているわけです。

「起業希望者」と「起業家」の年齢構成の比較

この数字の差は、次の2つの解釈が可能だと思います。

  1. シニア層は自己資金が潤沢で経験が豊富だから、起業までたどり着ける確率が高い。年を追うごとに、起業をサポートする環境が整っているので、シニア起業の割合が増えている。
  2. シニア層は再就職が難しいので、仕方なく起業する人が多い。年を追うごとに、再就職への壁は高くなっているので、自営業となる人の割合は増えている。

どちらの解釈が正しいのかは、このデータだけでは判断できません。

しかし、あなたがシニア起業について検討される際には、「仕方なく起業している人がいる可能性が有る」ことは、覚えておいても良いでしょう。

もし、あなたが起業をこころざす場合は、自分の意思で起業を決め、周囲の理解や資金繰りも含めて、着実に準備を進めることをお勧めします。

[シニアガイド編集部]