シニアは、縦書き文字を見ると脳が活性化する
年齢によって縦書き文字を見たときの反応が異なる
情報管理ソリューション会社のトッパン・フォームズは、“年配層は「縦書きの文字情報の方が高い関心を持つ」傾向があり、若年・中年層は「縦書きの文字情報を注視せず、関心に結びつかない」傾向があることが実験で確認できた”、と発表しました。
実験方法は、45歳以上の年配層(男女7名/45歳~67歳)と、44歳以下の若年・中年層(男女5名/22歳~44歳)に、縦書きの文字情報を含むグラフィックデザインを見せ、脳機能と視線を計測しています。
45歳を境にしているのは、老眼などによる視力の衰えを自覚しはじめる年頃のためです。
実験の結果、年配層は縦書きの文字情報を読んでいるときは、思考や創造性を担う、脳の前頭葉という部分の活動が活性化します。視線も文字情報を注視し、しっかりと読み込んでいます。
しかし、若年・中年層では、脳には高い活動が見られず、文字情報も注視していません。
つまり、45歳ぐらいを境にして、上の世代は縦書きの文字列を文字として読み解こうとし、下の世代は、文字と受け取らずに、読み飛ばしている状態と言えます。
これらの結果により、縦書きの文字情報は45歳以上の年配層では「読みやすさと、内容を理解しようとして関心を引き出す」という効果があるとしています。
トッパン・ファームズでは、金融機関や自治体からの通知物など、確実に伝えなければいけない情報をどのように伝達するかをテーマに、さらに実証的研究を重ねて、社会的課題に対する解決策の提案をしていく予定としています。
将来的には、医療機関の書類など必ず読んでもらいたい書類のレイアウト、シニア層をターゲットとした旅行パンフレットのデザインなど、応用分野の広そうな実験結果であり、さらなる探求が期待されます。
縦書きを文字として認識しないのは、パソコンとスマホが横書きだから?
日本語では、文字を読み書きする方向について、縦書きと横書きが共存しています。
例えば、書籍の場合、縦書きの書籍と横書きの書籍が両方とも流通しています。
縦書きと横書きは、その本の分野や編集者の意図によって選択されます。一般に、文学書は縦書き、理工書は横書きが選択されます。
しかし、パソコンや携帯電話など、コンピュータのディスプレイ表示では、横書きが基本です。
縦書きにするための手段も用意されていますが、主流ではありません。
ここからは、まったくの推測になるのですが、トッパン・ファームズの実験で高齢者が縦書きの文字列に反応しているのは、老眼などの肉体的問題ではなく、最初に文字情報を読み始めた際に、縦書きの書籍に親しんでいたという文化的な背景が要因なのではないでしょうか。
逆に、現在の44歳以下の世代が文字情報に接する機会は、パソコンや携帯電話、スマートフォンなどの画面であり、縦書き表記の書籍を読む経験が少なくなっています。そのため、縦書きになった文字列は文字情報として認識しないのかもしれません。
すでに、比較的若い層に向けた書籍は、横書きが増えています。現在は縦書きが主流の文学書などでも、今後は横書きが主流になるのかもしれません。