55歳からの就職を支援する無料技能講習会と、その成功例
55歳以上の就職を支援する仕組み
現在は、外食産業などで人手不足がニュースになる状況ですが、それでも55歳以上で就職を希望する人にとって、再就職は簡単なことではありません。
なお、高年齢者雇用安定法では、55歳以上を「高年齢者」と定めており、支援するための事業を行なっています。
その1つに「シニアワークプログラム地域事業」があります。
これは、55歳以上の就職を希望する高年齢者を対象に、技能講習会を中心にしたサポートを行なうことで就職を実現するものです。
就職先はフルタイムに限らず、パートタイムなどの短時間雇用もターゲットにしています。
主催は各都道府県の労働局ですが、入札によってシルバー人材センターや民間企業に運営を委託しており、各地域ごとに特色のある運営が行なわれています。
真面目に就職を希望している人を対象にしているため、参加資格は厳しく規定されています。ある県の例を見てみましょう。
- ハローワークに求職登録した55歳以上の方
- 3カ月以内の就職を希望している
- 全日程休まず、遅刻・早退なく受講できる
まずは、もよりのハローワークに行って、求職登録をして、技能講習会について相談することから始めましょう。
就職率が高い技能講習会の項目
「シニアワークプログラム地域事業」で行われる技能講習会は、1~2週間程度の期間で、10~20人を対象に行なわれます。
受講料は無料で、テキストも無償で支給されます。
例えば、実績を挙げている県では、次のような講習に力を入れています。
- フォークリフト運転技能
- 警備業務
- 医療事務基礎
- ホテルスタッフ
- 調理スタッフ
- ビルクリーニング
- マンション管理人
- 介護支援スタッフ(送迎車運転業務を含む)
「シニアワークプログラム地域事業」の成績は、技能講習会を受けた修了生の就業率で評価されるため、講習の科目は、実際に就職できる講習に絞り込まれています。
つまり、上に挙げた講習の対象が、今の時点で、就職しやすい職種と言えます。
主催者は、技能講習会以外にも、求人をしている企業を招いての面接会の開催、就職に向けてのコンサルティングなどを行ない、受講者の就職活動を支援します。
コンサルティングの例として、「70 歳以上に希望者が多いマンション管理員は、継続雇用以外では70 歳以上の新規採用が難しいことを説明し、清掃や警備など70歳以上でも採用実績のある職種を勧める」などが挙げられています。
最後に、実際に講習を受けて再就職した例を、いくつか紹介しましょう。
再就職事例1:ホワイトカラー男性の再就職
- 受講者:66歳 男性
- 技能講習受講前の状態:前職は情報処理関連の仕事に従事する典型的なホワイトカラー層、再就職先を探していたが、年齢が66歳のため、希望する事務系の職種で採用されず、職種を変更後、「ホテルスタッフ」講習(6日間)の受講を申し込んだ。
- 就職までの経緯:講習のカリキュラムに職場見学を盛り込み一流ホテルの客室清掃やベッドメイクを見学。プロフェショナルな作業を見て、就業意欲が高まり、講習最終日の就職面接会に参加し、参加事業所全社(6社)の面接を受けた。その結果、ホテルの清掃業務を受託している清掃会社より内定を得て、就職に成功した。
再就職事例2:65歳で退職した建築士の再就職
- 受講者:66歳 男性
- 技能講習受講前の状態:1級建築士、宅建の資格を保有、前社を65歳で退職後、数か月間、求職活動をしていたが、就職できず。ハローワークで「マンション管理員養成講習」(7日間)のパンフレットを見て受講を申し込んだ。
- 就職までの経緯:講習最終日の就職面接会に参加し、2社応募し、面接を受けたが不調に終わり不採用。その後、別のビル管理会社より、ある就業場所でマンション管理員を紹介してほしいとの依頼が事業受託者にあり、就業場所に近い該当の修了生を紹介。面接後、フルタイムで内定を得て、就職することができた。
再就職事例3:前職にとらわれず、美容関係から警備業に
- 受講者:56歳 男性 (経験職:美容関係営業)
- 技能講習受講前の状態:離職中。就職活動において警備の仕事の基礎知識を習得し就職に活用したいという意向で、「警備業務」講習(7日間)を受講。他の講習なども受講希望。早急な就職を希望していた。
- 就職までの経緯:技能講習を経て、警備業の知識をいかして就職活動を行ない、就職先が決まった。過去の経験業種にとらわれず再就職に成功した。
再就職事例4:後期高齢者の再就職
- 受講者:77歳 女性
- 技能講習受講前の状態:ヘルパーの資格も保有していたが、後期高齢者のため、就職できず。ハローワークにて、「清掃スタッフ講習」(7日間)のパンフレットを見て受講を申込んだ。
- 就職までの経緯:講習のカリキュラムに就職支援セミナーを盛り込み、履歴書の書き方や面接の受け方等を指導し、就業意欲を高めた。講習最終日には、面接申込の勧奨をし、清掃会社5社の面接を受けた。その結果、1社より就業形態・パートでの内定を得て、就職に成功した。