認知症による行方不明者1万人時代の正しい怖がり方

[2016/6/20 00:00]

認知症による行方不明者が増えている

警察庁が2015年度の行方不明者の状況について報告書を公開しています。

日本の行方不明者は、一時より少なくなっています。

しかし、認知症を原因とした行方不明者は、毎年増え続けており、今年度も1万2千人を越えました。

行方不明者の動向を、編集部作成のグラフを中心に見ていきましょう。

行方不明者は8万人で、毎年減っている

2015年度の行方不明者は、82,035人でした。

ここ10年ほどは、8万人台で、少しずつ減少しています。

記録が残っている50年前からの推移を見てみましょう。

グラフの青い線で示した「行方不明者数」には、1980年台の11万人、2003年の10万人という2つのピークがあり、8万人というのは、かなり少ない時期にあたります。

また、グラフの緑色の線で示した「所在確認数」は、行方不明だった人の所在が確認された数です。

こちらも、ここ数年は8万人前後で安定しています。

行方不明者と所在確認数の推移

行方不明者は10代と20代が多い

行方不明者を年齢別にみると、「10代」「20代」「30代」など若い世代が多くなっています。

年齢が上がるにつれて行方不明者は減っていき、「60代」では「10代」の3分の1になります。

しかし、「70代」と「80代以上」では、また増え始めています。この増加の原因の一つが認知症なのです。

年齢別に見た行方不明者の比率

行方不明者は男性の方が多い

なお、性別では、「男性」の方が多く65%を占めます。

8万人の行方不明者のうち5万人強が男性、3万人弱が女性です。

所在確認された状況

行方不明になる原因

人が行方不明になる原因はたくさんありますが、今年度の統計では「家庭の問題」「病気(疾病)」「事業や職業上の問題」「遊び癖や放浪癖」などが多くなっています。

原因別に見た行方不明者の比率

認知症を原因とする行方不明の増加

この中で「疾病」を原因とする行方不明が近年増えてきています。

その原因になっているのが「認知症」による行方不明者で、増加傾向が止まらないことから、4年前から「認知症」だけを区別した集計も始まりました。

下のグラフを見ると、統計を取り始めた4年前から、認知症による行方不明者は増え続けていることがわかります。

認知症が原因と思われる行方不明者の比率

今年度は、「認知症」による行方不明者の比率は14.9%に上り、「事業や職業上の問題」よりも多く、「家庭の問題」に近い割合となっています。

今年度の認知症による行方不明者は14.9%

行方不明者の9割は1年以内に見つかる

しかし、行方不明を極端に恐れる必要はありません。

行方不明者が「所在確認」、つまり見つかる確率は、以前よりも向上しています。

2015年度についてみると、行方不明届けが出た当日に37.9%、1週間以内に71.5%の人が見つかっています。

その後も見つかる人は増え続け、1年以内には91%の人の所在が確認されています。

所在確認までの期間

行方不明者の8割以上は無事が確認された

また、所在確認された状況を見ると、行方不明者が無事に見つかった場合と、帰宅が確認された場合を合わせると84.6%になります。

行方不明者の8割以上は無事に帰宅できたわけです。

所在確認された状況

認知症による行方不明を防ぐ手段の整備

認知症による行方不明者を探すための情報は以前よりも整備されてきています。

現在、厚労省と警察庁に、行方不明者を探すためのサイトが設けられ、地方自治体が把握している行方不明者の情報が掲載されています。

これらの整備もあって、行方不明になってから1週間以内に7割の人が、1年以内なら9割の人が無事に発見されています。

万が一、行方不明になった場合は、警察に行方不明の届けを出して捜索を依頼しましょう。

また、行方不明を予防するために、自治体ごとにGPS端末の貸し出しや、見守りの体制づくりなどの対策が用意されるようになりました。

これらの対策については、地方自治体が主体となっています。まず、地元の地域包括支援センターや役所の窓口で、利用できる制度がないか相談してみましょう。

[シニアガイド編集部]