30年前のシニアから変わったのは、お金に対するシビアさと楽しみの個人化
30年間に渡るシニア層の変化
博報堂生活総合研究所は、60歳から74歳の年齢層を対象にして、30年間に渡って行なわれてきた調査結果から、シニア層がどのように変化したのかレポートを発表しています。
このレポートは、1986年から、ほぼ同じ内容で10年置きに行なわれてきた調査結果から、いくつかの変化を抜き出したものです。
30年間で、シニア層の考え方がどのように変化したのか、見ていきましょう。
生きたいと思う年齢は「84歳」
「あなたは何歳まで生きたいと思いますか」という質問の回答を平均すると、30年前の1986年では「80歳」でしたが、2016年には「84歳」になって、4歳上がっています。
1986年当時の平均寿命は、男性が75.23歳、女性が80.93歳でした。また、最新の平均寿命は、男性が80.50歳、女性が86.83歳です。
つまり、平均寿命は5~6年伸びていますから、生きたいと思う年齢が4歳上がったのは、それを反映しているのでしょう。
60代は「再出発の時」
「あなたにとって60代とは人生のどんな時期にあたりますか」という質問に対し、「再出発の時」という回答が増えています。
一方で、「解放の時」という回答は、この10年間で減っています。
これは、2013年の 高年齢者雇用安定法の改正によって、65歳までの雇用が前提となったことが影響しているのでしょう。
以前のような、60歳で退職して第二の人生を送るというパターンから、60歳で再雇用されて65歳まで働くというパターンに、サラリーマンの人生は変わりました。
60代前半は「現役で働く期間」となったので、「解放の時」とは思いにくいのでしょうす。
今のお小遣いは30年前よりも少ない
「1カ月のお小遣いの金額」は、30年前は「28,830円」でした。
1996年には「33,450円」に上がりましたが、その後は下がり2016年は「26,820円」でした。
つまり、シニアのお小遣いは、30年前に比べて、2,010円下がってしまったのです。
その間に、デフレの時期があったとはいえ、なかなか厳しい数字です。
先の見通しは暗いと考える人が増えている
こういう経済状態を反映してか、「先の見通しは明るいか、暗いか」という質問に、「暗い」と答える人が増えてきています。
1986年には3分の1だったのが、2016年には半数近くに増えています。
今欲しいものは「お金」
また、「いま欲しい物はなんですか」という質問に、1986年は「幸せ」と答える人が31%いましたが、2016年は半分に減りました。
一方、「お金」と答えた人は28%から増え続けており、40%を越えました。
抽象的な「幸せ」という言葉よりも、「お金」という具体的なものに、欲望の対象が変わってきています。
夫婦で共通の趣味を持ちたいとは思わない
「家族」という関係も変わりつつあります。
「夫婦で共通の趣味を持ちたい」と考えている人と、「子どもといつまでも一緒に暮らしたい」と考えている人は、いずれも20年間で約20%減りました。
逆に「一人暮らしをしたい」という人は、じわじわ増えてきています。
家族であっても、いつも一緒に居るという関係から、お互いに距離を置いた関係に変わりつつあるようです。
楽しみ方も個人化
この30年間で、「外国語を勉強したい」「スポーツクラブの会員になりたい」「一人でレストランやバーに生きたい」と回答する人は、ほぼ2倍に増えました。
趣味や生活の楽しみも、家族と共にではなく、一人の個人として楽しむという姿勢は、趣味や学習にも表れているのです。
この30年間の変化には、経済的なもののありますが、自分一人だけで楽しむことを追求するような生き方の変化がもっとも大きな変化のように感じます。