自分の遺産の一部を「遺贈」する場合は、事前に相続人の理解を求めよう
「遺贈(いぞう)」に関するアンケート
医療・人道援助活動を行なう「国境なき医師団日本」が、「終活と遺贈に関する意識調査2016」という調査結果を公開しています。
この調査は、全国の15歳~69歳の男女を対象にインターネットで行ない、有効サンプル1,000名の結果を集計したものです。
ここでは、あまり調査の対象となることがない「遺贈(いぞう)」に絞って結果を見ていきます。
「遺贈」とは、「遺言」によって、相続人ではない個人や団体に資産を分け与えることを言います。
例えば、自分が残す遺産の全部や一部を、特定の団体に寄付する場合などに使われ制度です。
大きな資産を持っていたら「遺贈」したいという人が多い
まず、「将来大きな資産を保有していた場合、社会の役に立てるために遺贈したいと思うか」と質問しています。
「遺贈をしたい」と「遺贈してもよい」を合わせた「遺贈に前向き」な人の割合は67%でした。
年代別にみると、「60代」では「遺贈をしたくない」という回答が多く、40%を越えています。
遺贈をする分野については「人道支援」が多く、「災害復旧支援」「教育・子育て・少子化対策」が続きます。
また、遺贈をする団体については、「営利目的でない」が多く、「資金の使い道が明確」「活動内容に共感できる」が続きます。
自分の親が遺贈を希望したら
自身の親が遺贈することを希望したら、「どちらかといえば賛同する」が一番多く、「賛同する」が続きます。
条件付きながら賛同する人が多いのですが、「どちらかといえば賛同しない」と「賛同しない」を合わせると30%近くになります。
また、パートナーが遺贈することを希望した場合についても、条件付きながら賛同する人が70%弱を占めます。
ただし、賛同しない人も約30%います。
遺贈を志すなら生前から準備をしよう
自分が親である場合でも、パートナーである場合でも、遺贈をすることに対して、相続人が不満を抱く可能性が3割程度はあると覚悟しておきましょう。
相続人にしてみれば、本来であれば、自分たちの手元に相続される財産の一部が、相続人ではない団体や個人に贈られるわけですから、不満を抱く人がいても不思議ではありません。
遺贈を考えている人は、遺言書で、いきなり遺贈の意思を表明するのではなく、自分の生前から「遺贈したい」という意思を伝えて、相続人の理解を求めておくことが必要でしょう。
その上で、「公正証書遺言」などのきちんとした形で、遺贈の意思を明確に残すようにしましょう。
遺贈は、自分の遺志で遺産の一部を公共の利益に役立てようという、高い志(こころざし)による行為です。
せっかくの志が、トラブルを招くことなく、スムーズに実行されるように、生前から準備を進めましょう。