高齢単身無職世帯の毎月の支出は「156,374円」
一人暮らしの高齢者の家計のイメージ
高齢者の一人暮らしというと、その日の暮らしにも困るような暗いイメージで語られることが増えています。
しかし、実際に一人暮らしをしている高齢者の多くは、普通に日常生活を送っています。
例えば、高齢単身者の方の家計簿を見て、お金の収支が分かれば、高齢者の一人暮らしについて、もう少し正確なイメージが想像できるのではないでしょうか。
ここでは「家計調査年報(家計収支編) 2015年」のデータを使い、一人暮らしの高齢者の収支を見てみましょう。
実際の家庭の計簿ではなく、平均的な数字ですが、一人暮らしの高齢者には、どのような収入があって、何にお金を使って暮らしているのかが分かります。
収入編:収入の91%は年金
ここからは、一人暮らしの高齢者のことを「高齢単身無職世帯」と呼びます。
定義としては、60歳以上の無職で、単身世帯で暮らしている方ということになります。
なお、2015年時点の平均年齢は「75.1歳」でした。
高齢単身無職世帯の、実収入は「115,179円」です。
そのうち、「104,832円」は社会保障給付、つまり年金です。
高齢単身無職世帯の収入のほとんどは年金に頼っていることがわかります。
事業所得や仕送りなどの「その他」の収入が「10,347円」あります。
なお、国民年金では、満額支給の場合でも、月に「65,008円」ですから、この調査の金額には届きません。
これだけ年金収入があるということは、厚生年金に加入している人が多いことがわかります。
支出編1:税金と社会保険料は必須
まず、逃れられない支出から見ていきましょう。
意外かもしれませんが、年金にも所得税や住民税などの直接税がかかります。これが「6,731円」です。
また、国民健康保険や後期高齢者医療制度などの社会保険の保険料もかかります。これが「5,791円」です。
合計すると、月に「12,541円」は必ず出ていきます。
支出編2:住居関係
次に、住居にかかる支出を見ていきましょう。毎月かかる固定費的な支出です。
住居費は「13,814円」です。
これは、持ち家の人も含めた平均値なので、この金額で納まっていると考えるべきでしょう。
電気、ガス、上下水道などの水道光熱費は「13,359円」です。
支出編3:食費と交際費
日常生活にかかる出費を、金額が大きい順に見ていきましょう。
まず、食費が「35,137円」です。1日千円ちょっとというところです。
次に交際費が「20,234円」、教養娯楽費が「15,804円」です。
多いと感じるかもしれませんが、このあたりは個人差があるところでしょう。
交通・通信費は「12,497円」です。一般的な携帯電話料金を考えれば、抑えている感じでしょう。
老後に心配な保険医療費は「8,348円」です。
高齢者は収入が少ないうえに、特に後期高齢者医療制度は負担が軽いので、現役世代が想像しているよりも医療費はかかりません。
ここまで挙げた項目を除いた「その他」の支出は「12,111円」となります。
支出の合計は、実収入を4万円上回る
ここまで見てきた支出の合計は、税金や保険料も含めると「156,374円」です。
しかし、実収入は「115,179円」ですから、月に「41,195円」不足しています。
実際には、年金の金額や、住居費などの事情が個人個人で異なるため、絶対にこれだけの金額が必要というわけではありません。
例えば、2014年現在で支給されている、厚生年金の平均支給額は「147,513円」です。これなら、毎月の不足分は約1万円ですみます。
それでも、給与などの収入があるうちに、毎月の家計のなかから、将来に備えて老後のための蓄積をするように心がけましょう。
例えば、月に4万円前後の想定なら、企業年金や確定拠出年金などを利用して積み立てることができます。まず、勤務先の企業年金制度などを調べてみましょう。