オリジナリティあふれる「墓石大賞」受賞のお墓

[2016/9/29 00:00]

「墓石大賞」は、六月書房が刊行している「霊園ガイド」が、毎年選定しているデザイン墓石のコンテストです。

バランス・美観に優れ、先祖供養の心が感じられる墓石が選定基準で、デザイン墓石を施工する石材店の努力を讃え、墓石文化の高揚・発展に寄与することを目的とするものです。

2016年9月に公開された「第28回 墓石大賞」では、2015年8月から2016年7月までに日本国内で建墓されたお墓が対象となっています。

受賞した5つの作品のうち、3つがメモリアルアートの大野屋によるものでした。

ここでは、メモリアルアートの大野屋提供の写真と解説文によって、3つの受賞作を紹介します。

大熊家之墓 (都立多磨霊園)

46歳の若さで亡くなられた奥様のためにご主人が建てたお墓は、試行錯誤しながら完成までに3年を要しました。

人と違ったことが好きだった奥様が「いいね」と言ってくれるようなお墓づくりを目指し、墓石にはピンク色が鮮やかな石材である「桃山」を使用。角地であることを有効に活用し、お墓の正面を角に向け、前側の外柵を後側よりも一段低くした、お参りに来た人を両手を広げて暖かく抱くようなデザインの斬新さが高く評価されました。

“いろいろ考えてたどり着いたのは、とてもお墓とは思えないような空間でしたが、遺影を置くと、彼女が「いいじゃん!」と笑ってくれてるような気がしました。(彫刻の)「ありがとう」の文字は「ありが」が長男、「とう」が私。親子で習字の先生のもとに通い、先生に選んでいただきました。”と大熊様。ご家族と故人の絆が凝縮された、想いあふれるお墓です。

田中家之墓 (狭山湖畔霊園)

広い区画面積の場合難しいとされる24平方mのお墓全体の構成がバランスよくまとめられており、瀟洒な日本家屋を連想させるような端正な美しさが評価されました。

「お参りに来た人が暗くならず、気持ち良くなれることが大事」と考え、石碑には好きな海の波をイメージした彫刻を施し、墓誌にはグラスエッチング加工で珊瑚を彫刻。メンテナンス面にも配慮し、植栽の代わりに奥の屏風にオリーブグリーンラインという石材で緑を取り入れ、真鍮門扉にもグリーンの着色を合わせることで、全体の統一感を生み出しています。区画に排水トレンチを組込み傾斜をつけていることも特徴の一つ。献花台の水は、コックをひねれば、排水出来るようになっています。

また、入口脇に石のベンチを置き、故人とゆっくりと語らうことのできる空間を演出するなど、大区画ならではのメリットを最大限に活かしています。

森田家之墓 (奥多摩霊園)

東日本大震災の2年後に訪ねた東北の状況が心に重く残っていたという施主の森田様。

「人はいつどこで、また希望通りの最期を迎えられるか分からない」と感じ、生前墓の建立を決意されました。「大自然の中で自然と共にあるお墓で、山里の道端にポツンとある道祖神のようなものを」という施主の希望を基に、奥多摩霊園の魅力の一つである深山の景観にマッチするようにデザインしています。

東北の復興に寄与したいという施主の気持ちもあり、墓石本体には東北産の「伊達冠石」を採用。「伊達冠石」の最大の特徴である土のついた状態を活かし、加工を極力控えて「自然と共にあるお墓」のイメージを表現しました。「結」の文字は、自然と結ぶ、家族の絆、人と人、など様々な縁を結ぶという意味が込められています。芝生区画の特徴を活かすよう、石碑や墓誌など全体の配置にもこだわっています。

[シニアガイド編集部]