定年後の継続雇用の給料は、従業員が思っているよりもずっと少ない
一般社団法人コンピュータソフトウェア協会(略称:CSAJ)が、「継続雇用後の賃金水準」と「技術者の継続雇用の支障となっていること」のアンケート結果を公開しています。
このアンケートは、コンピュータソフトウェア業界の企業と従業員の両方を対象としており、両者の間で継続雇用について大きなギャップがあることがわかりました。
従業員の64%は、これまでの収入の8割は欲しいと思っている
「継続雇用後の賃金水準」について「継続雇用となる前の定年時の年収の何割程度を希望するか」聞いています。
従業員側は「定年時の年収と同じぐらい」が一番多く34%、次が「8割程度」で30%で続きます。
この2つを合わせると64%なので、従業員の半数以上は、これまでの年収と同じか減っても、これまでの8割程度を希望していると言えます。
しかし、企業側の回答を見ると「6割程度」が一番多くなっています。
「定年時の年収と同じぐらい」という回答はわずか10%、「8割程度」は11%に留まっています。
恐ろしいことに、「定年時の年収と同じぐらい」から「5割程度」と回答した企業は59%しかありません。
残りの40%以上の企業は「その他」と回答しているので、「定年時の年収の5割未満」である可能性が高いといえるでしょう。
企業の不安は「技術・スキルの陳腐化」
では、企業側は、どんな理由で継続雇用に対して厳しい見方をしているのでしょう。
「技術者の継続雇用の支障となっていること」を企業に聞くと、「保有している技術・スキルが陳腐化している」という回答が一番多くなっています。
2番目以降も、「新しい技術を習得するのに時間・費用を要する」「個人により能力や体力の差が大きく、会社にとって雇用リスクが高い」と、継続雇用対象者の能力を危惧する意見が多くなっています。
また、「高年齢の技術者を活用するノウハウが社内に蓄積されていない」など、企業側の受け入れ体制ができていないことも理由となっています。
従業員の不安は「気力・体力」と「働く気持ち」
継続雇用される従業員側にも不安はあります。
「技術者の継続雇用の支障となっていること」を従業員に聞くと、一番多い回答は「加齢に伴い、気力・体力が落ちてしまう」でした。
また、2番目には「仕事よりも家庭や趣味を充実させたい気持ちが強くなる」という、働く気持ちの変化も挙がっています。
3番目は同率で、「新しい技術を習得するのに時間・費用を要する」と「保有している技術・スキルが陳腐化する」が並んでいます。従業員側でも、自分のスキルのレベルを維持することが難しくなっていることを自覚していることがわかります。
高齢者雇用に関するパンフレットを無償公開中
CSAJでは、これらの調査内容を含む「コンピュータソフトウェア業 高齢者雇用推進ガイドライン」をPDFファイルで公開しています。
これは、比較的若い社員が多いコンピュータソフトウェア業界が、65歳までの雇用を義務付けられた状況に、どのように対応していくべきかを考えるためのパンフレットです。
ページ数は80ページと多く、現在の従業員構成のボリュームゾーンが中高年齢に至る時期までにどのように活用していくかを、各企業で検討するための資料となっています。
コンピュータソフトウェア業界に限らず、継続雇用制度について携わっている部署の方には一読をお勧めします。
また、自分が定年を迎え、継続雇用制度を選択しようとしている方も、企業側がどのような考えでいるのかを確認するために目を通しておくことをお勧めします。