単身世帯と2人以上の世帯では「心の豊かさ」の価値観が異なる
「豊かさを感じているか」という質問
金融広報中央委員会が、毎年行なっている「家計の金融行動に関する世論調査」は、2人以上の世帯と単身世帯とで、ほぼ同じ質問票を使っていますが、集計は別々に行なわれています。
集計結果を見ていると、共通の質問に対して、2人以上の世帯と単身世帯とでは、かなり異なった結果が出ていることに気が付きます。
特に「あなたは、生活感覚として“経済的な豊かさ”と“心の豊かさ”について、どのように実感していますか」という質問に対する回答が、大きく異なっています。
単身世帯と2人以上の世帯の「豊かさ」の尺度について、もう少しくわしく見ていきましょう。
グラフは資料を基に編集部で作成しました。
「経済的な豊かさ」を感じていない人が多い
「経済的な豊かさ」については、4段階で聞いています。
「まったく実感していない」と「あまり実感していない」が、“豊かさを感じていない”回答です。
そして、「ある程度実感している」と「実感している」が、“豊かさを感じている”回答です。
2人以上世帯では、“豊かさを感じていない”人は60%を越えています。つまり、経済的豊かさを実感できない人の方が、ずっと多いのです。
そして、身世帯では、さらに多い70%以上の人が“豊かさを感じていない”と回答しています。
大きな差がある「心の豊かさ」
ところが、同じ質問形式で、「心の豊かさ」について聞くと、結果が異なります。
2人以上世帯では、“心の豊かさを感じていない”人は、40%以下になります。
つまり、半分以上の人は心の豊かさを実感しています。
しかし、単身世帯では“心の豊かさを感じていない”人は約55%で、半数を越えています。
単身世帯と2人以上世帯の回答を比べると、経済的な豊かさを感じていない人の割合の差が10%ほどだったのに対して、心の豊かさでは差が17%に広がっています。
単身世帯では、「心の豊かさ」を感じている人が少ないのです。
何が「豊かさ」を感じさせるか
「豊かさ」を感じるためには、何が必要なのでしょう。
「“経済的な豊かさ”を実感するためには、次のうち何が大切だと思いますか」という質問に対する答えは、単身世帯と2人以上世帯で差がありません。
つまり、経済的な豊かさを感じるためのポイントは、世帯の形によらず共通なのです。
しかし、「“心の豊かさ”を実感するためには、次のうち何が大切だと思いますか」という質問に対する答えは、単身世帯と2人以上世帯で大きく異なります。
2人以上世帯が「健康」「経済的な豊かさ」「家族とのきずな」「将来の生活への安心感」などを挙げているのに対して、単身世帯では「時間的な余裕」と「趣味の充実」を挙げている人が多くなっています。
特に「家族とのきずな」は、単身世帯では13%しか挙げている人がいませんが、2人以上世帯では44%の人が挙げています。
単身世帯と2人以上世帯では、心の豊かさを測るための価値観が大きく異なるのです。
「家族」の存在が消費などにも影響
単身世帯だから家族がなく「家族とのきずな」を重視しないのか、もともと「家族とのきずな」を重視しないから単身世帯なのかは、この調査結果だけからはわかりませんし、各世帯の事情にもよるでしょう。
しかし、「心の豊かさ」を感じるためには、「家族とのきずな」が大きく影響していることはわかりました。
単身世帯と2人以上世帯では、持ち家の購入を始めとする消費行動でも大きな違いがありますが、その根底には「家族」という要素の有無が影響している可能性は大きいでしょう。