現役世代は、高齢期の暮らしを恐れすぎている!?
NPO法人「老いの工学研究所」が「高齢期への備えに関する調査」の結果を公開しています。
65歳未満の現役世代144人と、65歳以上の高齢者102人に同じ質問をしており、現役世代が考えている高齢者像と実際の高齢者が感じていることの差が明らかとなっています。
高齢者のほうが不安要素は少ない
「高齢期に心配なこと、恐れを感じるもの」という質問では、20個の候補から不安に感じている要素を、いくつでも選んでいます。
「65歳未満」と「65歳以上」の回答を比べると、「身体能力の衰え」や「認知症」などが共通で上位に入っています。
しかし、「65歳未満」の回答者に限ると、「孤独や寂しさ」「やることがない状況」「年金の受給額」「蓄えの少なさ」などが上位に入っています。
現役であるこの世代は、高齢期について「孤独で寂しく、暇を持て余す」といったネガティブなイメージを強く持っていることが分かります。
また、「年金制度の将来」など、経済的な面で不安を抱えていることが分かります。
一方、高齢者である「65歳以上」の回答では、「身体能力の衰え」「認知症」「大きな病気やケガ」など、現実に感じている自分の身体の衰えが上位に入っています。
環境などの外的要因で50%を超えているのは「家の周辺環境」だけでした。
自分の身体関係以外のことでは、意外なほど不安の要素が少ないことが明らかとなりました。
「必要以上に高齢期を恐れている」
今回の結果について、調査を行なった「老いの工学研究所」では、次のようにコメントしています。
今回の調査では、次世代(65歳未満)が持つ高齢期のイメージが、実際の高齢者の暮らしよりもかなりネガティブであり、老後資金に関する不安も重なって、高齢期に対する心配や恐れが大きくなっている様子が伺えました。このような現実と乖離したイメージは、高齢者を可哀想だと思い込んで弱者扱いするなど対応を誤ったり、必要以上に高齢期を恐れる姿勢につながったりし、活力ある長寿社会の実現にとってマイナスに作用します。
現実とは乖離し、かつ漠然とした恐れを抱いたままではなく、高齢期に必要な備えをし、楽しく充実した高齢期を過ごすには、「現実の高齢期の暮らしや、高齢者の心境を知る機会」、「具体的に高齢期の暮らしを考える機会」を、次世代に対して積極的に提供していく必要があります。