自分が人並みの給与を貰っているかどうかが分かるグラフ
自分の給与は、同世代とくらべて多いか少ないか
「自分は人並みの給与を貰っているのだろうか」というのは、多くのサラリーマンが持つ疑問でしょう。
ニュースなどでは、飛び抜けて多い収入がある人の金額や、大学新卒で入社した新入社員の給与額は、ときどき話題に上ります。
しかし、「一般的な40代後半のサラリーマンである自分の給与が、同世代の中で真ん中より上なのか、下なのか」というような疑問に答えてくれる数字は、あまり見かけません。
厚労省が公開している「賃金構造基本統計調査」という資料の中に、その答えがありました。
この記事では、その資料の一部をグラフ化して、自分の給与が、どれぐらいの位置づけにあるのかわかるようにしました。
年代ごとの給与の幅を表現したグラフ
さっそくグラフを見てもらいましょう。
まず、「男性」のデータです。数字は月額で、万円単位です。
給与本体だけで、手当などは入っておらず、税金や保険料を引く前の数字です。
青い線で示した数字が「上限」、赤い線が「平均」、黄色い線が「下限」と思ってください。
例えば、「20~24歳」であれば、給与が高い人は「25.7万円」、平均は「20.9万円」、給与が低い人は「16.4万円」と読みます。
20代前半のあなたの給与が「25万円」だったとしたら、平均よりも高く、この年代としては上限に近い位置にいることが分かります。
もう1つ「中位数」というのがありますが、これは全体の真ん中に位置している人の賃金です。
給与が高い少数の人がいると、平均値は上がってしまいます。
「中位数」は真ん中の人のデータですから、その場合でも影響を受けずにデータの真ん中を確認できます。
20代前半では、まだ極端に給与が高い人が少ないので、平均値と中位数の差はほとんどありません。
さらに、年代を追ってデータを見ていきましょう。
「35~39歳」あたりから、役職に就く人が増えるので、給与の差が大きくなっていきます。
給与が低い人も20万円台に乗ってきますが、高い人は45万円まで行きます。
同じ年代であっても2倍以上の差がつくわけです。
この世代の平均値と中央値は30万円前後ですから、自分の給与が30万円台に乗っていれば、同世代の相場並みには貰っていると考えて良いでしょう。
ここから「50~54歳」のピークに向けて給与が上がっていきます。
どのレベルの役職に就くかによって、同世代間の給与の差が開いていきます。
「50~54歳」では、給与が高い人は66.2万円、低い人は22万円ですから、ちょうど3倍の差がつきます。
しかし、「55~59歳」からは、役職定年制度で役職を離れる人が多くなり、給与が下がっていきます。
多くの会社は「60歳」が定年で、その後は再雇用制度に切り替わるので、さらに給与が下がります。
平均値で見ても、60歳を境にして、41万円から29万円まで、大幅に給与が下がることがわかります。
男女の給与水準の差は大きい
女性のグラフを見ると、全体的に男性よりも給与の水準が低いことが分かります。
特に、30代後半から50代前半にかけて、男性との差が大きくなります。
これは役職に就く割合が異なることも原因でしょう。
給与のピークである「50~54歳」でも、男性とは平均値で15万円ほどの差があります。
給与が高い人同士を比べても、男性の3分の2に留まっています。
調査によれば、男女の給与差は縮まってきていますが、改善が必要な余地が残されていることが分かります。
自分の位置の確認と、将来の予測に
このグラフの用途は、同世代の中の自分の給与の位置を確認することだけではありません。
自分の給与が将来、どれぐらい貰えるのかという判断にも使えます。
例えば、30代前半の男性で、自分の給与が30万円だとしましょう。
これは、平均値や中位数に近い数字ですから、このままのルートをたどるとすれば、50代前半になって貰える給与は40万円ぐらいである可能性が高いでしょう。
20年後に、月給が50万円や60万円になるためには、大きな出世をするか、転職などでルートを変える必要があります。
逆に、入る金額がそれぐらいだとわかっていれば、住宅ローンなどを組む際に、むやみに楽観的な予想に走って、無理なローンを組むこともないでしょう。
また、50代後半から定年後にかけての給与の低下は忘れがちなので、気をつけましょう。
給与は、景気の動向や、会社の業績によって大幅に変わります。
しかし、一応の目安として、「この年代であれば、平均はこれぐらい。上限なら、これぐらい」という数字は、将来の生活設計を考えるときに役立つでしょう。
付録:実用的な上限と下限のデータの計算方法
最後に、上限と下限のデータを計算する根拠について、ちょっとだけ説明します。興味のある方だけお読みください。
普通、あるデータを見るときは、「最大数」「最小数」「平均値」を見ます。
しかし、給与についてみると、どんな世代でも、極端に稼ぐ人と、極端に稼ぎが少ない人がいるので、世代間の差が出にくくなります。
例えば、月に1千万円稼ぐ人が1人でもいれば、その世代の最大数は1千万円になってしまいます。同様に、月に10万円の給与という人は、どの世代にもいるので、最小数は10万円になってしまいます。
それを防ぐために、このグラフでは「十分位数」という数字を使っています。
「第1・十分位数」は、低い方から数えて全体の10分の1番目に該当する人のデータです。
同じように、「第9・十分位数」は、高い方から数えて全体の10分の1番目に該当する人のデータです。
大きい方も小さい方も、極端な10分の1のデータを除き、一般的なデータの中での上限と下限を示したのが上のグラフなのです。
さらに興味のある方は「十分位数」という言葉で検索することをおすすめします。