『夜間に運転中、歩行者用信号が赤か青かが分かりづらくなってきた』という例もある高齢者の視覚

[2017/3/10 00:00]

公益社団法人 色彩検定協会が「色と高齢者に関する実態調査」の結果を公開しています。

このアンケートは、全国の60代から80代の男女1,000人に対して、インターネットで行なわれました。比較対象として、30代の男女200人にも同じアンケートを行なっています。

年齢が上がるほど、能力低下への実感がなくなる

『直近の1年間で「色の見えづらさ」や「色の見間違い」を感じましたか』という質問に対して、60歳以上の9割は「感じない」と回答しています。

出典:色彩検定協会

もう少し詳しく、年代別に見ると、年齢が上がるにしたがって、「色の見えづらさなどを感じない」という回答が増えていきます。この結果を見る限り、色を判別する能力の低下に対して、自覚や実感が低くなる傾向があるようです。

出典:色彩検定協会

事故に直結する重大な支障の例もある

では、「色の見えづらさ」「色の見間違い」によって、どのような支障が出ているのでしょう。

60歳以上の人に具体的なエピソードを聞くと、「自動車運転など交通関連」が多くなっています。

具体的には、『夜間に運転中、歩行者用信号が赤か青かが分かりづらくなってきた』『信号機の青矢印が見えなくて、ブレーキをかけてしまうことが頻繁にある』など交通事故につながりかねない重大な支障が発生しています。

次いで、『文字が見えづらい』などの「視力・目のかすみ」、『ソックスの黒と紺が見分けられない』『薄い青だと思っていたシャツが緑色だと指摘された』などの「ファッション・小物」に関するエピソードが続きます。

出典:色彩検定協会

高齢者の自覚が必要

今回の調査結果について、一般財団法人 日本色彩研究所の名取和幸氏は、視覚能力が衰える高齢者への自覚と注意喚起が必要であるとして、次のようにコメントしています。

 一般的に加齢でさまざまな視覚機能の低下が現れます。例えば、視力の低下や老眼、色を見分ける力の低下、そして暗い場所で物を見る働きの低下などがその代表例です。

 今回の調査では「色の見えにくさを感じない」という回答をした高齢者が多くなりました。今回の調査のように単色では「色の見えづらさはない」と思っているようですが具体的なエピソードを読む限り、高齢者は日常生活において少なからず色の見分けにくさを経験していると調査結果から推察できます。

 高齢者が把握しづらくなる階段などの段差、信号機の色、道路標識、服用している薬の色見分けなど、日常生活における危険性を回避できるよう視覚能力の低下への自覚を促すとともに、自治体や企業も色のユニバーサルデザインに一層取り組む必要があると思われます。

[シニアガイド編集部]