確定申告するとやってくる「個人事業税」という、もう1つの税金
「確定申告」が済んだあとで
3月15日で所得税の確定申告が終わり、フリーランスの方も一息ついていると思います。
確定申告で申告した「所得」などの情報は、税務署で利用されるほかにも、他の税金を司っている役所にも利用されます。
よく知られているのは、「住民税」です。確定申告による情報を基に、居住している市区町村から、5月に納税通知が来ます。
もう1つ、忘れがちなのが、今回話題にする「個人事業税」です。
税率は低いのですが、会社員には関係のない税金なので、フリーランスとして独立したあとで、初めて存在を知る人が多いのです。
「個人事業税」は地方税
「個人事業税」は、都道府県が司る地方税です。
例えば、東京都民であれば、都税事務所から納税通知が来ます。
ここからは、東京都の場合を例にとって紹介します。
「個人事業税」には、次の3つの特長があります。
- 指定された職種のみに課税される
- 税率は職種ごとに決まっている
- 8月に納税通知書が来て、8月と11月の2回に分割して納付する
70種の職業だけに課税される
「個人事業税」は、個人が営む事業のうち、地方税法等で決められた70種の「法定業種」のみに課税されます。
法定業種は、「第1種(37業種)」、「第2種(3業種)」、「第3種(30業種)」の3つに分類されています。
税率は、第1種と第3種が「5%」、第2種が「4%」、第3種の一部が「3%」です。
第1種は、「物品販売業」や「問屋業」などの商業系、「出版業」や「広告業」などのマスコミ関連、「旅館業」や「不動産貸付業」など不動産投資関係に関わりそうな業種も入っています。
第2種は、「畜産業」や「水産業」です。
第3種は、「医業」や「歯科医師業」などの医療関連、「弁護士」や「公認会計士」などの国家資格取得者、「コンサルタント業」や「デザイン業」などの専門技能系が含まれています。
なお、第3種のうち一部の業種は、税率が3%となっています。
記事末に全業種の一覧表を載せているので、のちほど確認してください。
都税事務所の個人事業税の解説ページには、「(法定業種には)ほとんどの事業が該当します」とあるように、いわゆる実業であれば、かなりの確率で個人事業税がかかると思って良いでしょう。
控除額は「290万円」
個人事業税には「事業主控除」という控除が年間290万円あります。
つまり、所得が「290万円」以上であれば課税の対象となります。
事業者控除は、営業期間が1年未満の場合は月割になります。たとえば、営業期間が6カ月であれば、控除額は145万円になります。
なお、個人事業税には、所得税にある「事業専従者給与(控除)」はありますが、「青色申告特別控除額」がありません。
せっかく青色申告していても、所得税である65万円ないし10万円の控除はありません。税額の計算の時には気をつけてください。
8月と11月の2回納税する
個人事業税の納税通知書は、8月に届きます。
納税は8月と11月の2回に分けて、半額ずつ納税します。
納税先は、東京都であれば都税事務所の窓口ですが、口座振替、コンビニエンスストア、クレジットカード納付なども使えます。
納税通知書に記載されている詳細を確認してください。
これから独立する人は「法定業種」のチェックを
「個人事業税」は、会社員には縁のない税金なので、今ひとつ知名度が低いという問題があります。
例えば、会社員を辞めて個人事業主として独立した人が、8月になって納税通知書が届いてから「個人事業税」の存在を知るというパターンが多いのです。
また、地方自治体の支援を受けた貸出制度を利用しようとして、資金計画を提出したところ、「個人事業税」の記載がないことを指摘されて、初めて知ったという例もあります。
申告の手続きが、所得税の確定申告と一体化されていることも、知名度が上がらない理由でしょう。
これから、個人事業主としての独立を考えている場合は、まず、自分の考えている業種が「法定業種」に該当するかどうかを確認しましょう。
なお、「法定業種」は「職種」ではなく「課税対象となる事業」ですので、注意してください。
例えば「花屋」は法定業種にはありませんが、「花を仕入れて販売する事業」であるため、「物品販売業」に該当します。
付録:法定業種一覧(2017年3月現在)
◇第1種事業(37業種):税率5%
- 物品販売業
- 運送取扱業
- 料理店業
- 遊覧所業
- 保険業
- 船舶ていけい場業
- 飲食店業
- 商品取引業
- 金銭貸付業
- 倉庫業
- 周旋業
- 不動産売買業
- 物品貸付業
- 駐車場業
- 代理業
- 広告業
- 不動産貸付業
- 請負業
- 仲立業
- 興信所業
- 製造業
- 印刷業
- 問屋業
- 案内業
- 電気供給業
- 出版業
- 両替業
- 冠婚葬祭業
- 土石採取業
- 写真業
- 公衆浴場業(むし風呂等)
- 電気通信事業
- 席貸業
- 演劇興行業
- 運送業
- 旅館業
- 遊技場業
◇第2種事業(3業種):税率4%
- 畜産業
- 水産業
- 薪炭製造業
◇第3種事業(30業種) :税率5%
- 医業
- 公証人業
- 設計監督者業
- 公衆浴場業(銭湯)
- 歯科医業
- 弁理士業
- 不動産鑑定業
- 歯科衛生士業
- 薬剤師業
- 税理士業
- デザイン業
- 歯科技工士業
- 獣医業
- 公認会計士業
- 諸芸師匠業
- 測量士業
- 弁護士業
- 計理士業
- 理容業
- 土地家屋調査士業
- 司法書士業
- 社会保険労務士業
- 美容業
- 海事代理士業
- 行政書士業
- コンサルタント業
- クリーニング業
- 印刷製版業
なお、次の業種は税率が3%です。
- あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復 その他の医業に類する事業
- 装蹄師業