確定申告するとやってくる「個人事業税」という、もう1つの税金

[2017/3/21 00:00]

「確定申告」が済んだあとで

3月15日で所得税の確定申告が終わり、フリーランスの方も一息ついていると思います。

確定申告で申告した「所得」などの情報は、税務署で利用されるほかにも、他の税金を司っている役所にも利用されます。

よく知られているのは、「住民税」です。確定申告による情報を基に、居住している市区町村から、5月に納税通知が来ます。

もう1つ、忘れがちなのが、今回話題にする「個人事業税」です。

税率は低いのですが、会社員には関係のない税金なので、フリーランスとして独立したあとで、初めて存在を知る人が多いのです。

「個人事業税」は地方税

「個人事業税」は、都道府県が司る地方税です。

例えば、東京都民であれば、都税事務所から納税通知が来ます。

ここからは、東京都の場合を例にとって紹介します。

「個人事業税」には、次の3つの特長があります。

  • 指定された職種のみに課税される
  • 税率は職種ごとに決まっている
  • 8月に納税通知書が来て、8月と11月の2回に分割して納付する

70種の職業だけに課税される

「個人事業税」は、個人が営む事業のうち、地方税法等で決められた70種の「法定業種」のみに課税されます。

法定業種は、「第1種(37業種)」、「第2種(3業種)」、「第3種(30業種)」の3つに分類されています。

税率は、第1種と第3種が「5%」、第2種が「4%」、第3種の一部が「3%」です。

第1種は、「物品販売業」や「問屋業」などの商業系、「出版業」や「広告業」などのマスコミ関連、「旅館業」や「不動産貸付業」など不動産投資関係に関わりそうな業種も入っています。

第2種は、「畜産業」や「水産業」です。

第3種は、「医業」や「歯科医師業」などの医療関連、「弁護士」や「公認会計士」などの国家資格取得者、「コンサルタント業」や「デザイン業」などの専門技能系が含まれています。

なお、第3種のうち一部の業種は、税率が3%となっています。

記事末に全業種の一覧表を載せているので、のちほど確認してください。

都税事務所の個人事業税の解説ページには、「(法定業種には)ほとんどの事業が該当します」とあるように、いわゆる実業であれば、かなりの確率で個人事業税がかかると思って良いでしょう。

控除額は「290万円」

個人事業税には「事業主控除」という控除が年間290万円あります。

つまり、所得が「290万円」以上であれば課税の対象となります。

事業者控除は、営業期間が1年未満の場合は月割になります。たとえば、営業期間が6カ月であれば、控除額は145万円になります。

なお、個人事業税には、所得税にある「事業専従者給与(控除)」はありますが、「青色申告特別控除額」がありません。

せっかく青色申告していても、所得税である65万円ないし10万円の控除はありません。税額の計算の時には気をつけてください。

8月と11月の2回納税する

個人事業税の納税通知書は、8月に届きます。

納税は8月と11月の2回に分けて、半額ずつ納税します。

納税先は、東京都であれば都税事務所の窓口ですが、口座振替、コンビニエンスストア、クレジットカード納付なども使えます。

納税通知書に記載されている詳細を確認してください。

これから独立する人は「法定業種」のチェックを

「個人事業税」は、会社員には縁のない税金なので、今ひとつ知名度が低いという問題があります。

例えば、会社員を辞めて個人事業主として独立した人が、8月になって納税通知書が届いてから「個人事業税」の存在を知るというパターンが多いのです。

また、地方自治体の支援を受けた貸出制度を利用しようとして、資金計画を提出したところ、「個人事業税」の記載がないことを指摘されて、初めて知ったという例もあります。

申告の手続きが、所得税の確定申告と一体化されていることも、知名度が上がらない理由でしょう。
これから、個人事業主としての独立を考えている場合は、まず、自分の考えている業種が「法定業種」に該当するかどうかを確認しましょう。

なお、「法定業種」は「職種」ではなく「課税対象となる事業」ですので、注意してください。

例えば「花屋」は法定業種にはありませんが、「花を仕入れて販売する事業」であるため、「物品販売業」に該当します。

付録:法定業種一覧(2017年3月現在)

◇第1種事業(37業種):税率5%

  • 物品販売業
  • 運送取扱業
  • 料理店業
  • 遊覧所業
  • 保険業
  • 船舶ていけい場業
  • 飲食店業
  • 商品取引業
  • 金銭貸付業
  • 倉庫業
  • 周旋業
  • 不動産売買業
  • 物品貸付業
  • 駐車場業
  • 代理業
  • 広告業
  • 不動産貸付業
  • 請負業
  • 仲立業
  • 興信所業
  • 製造業
  • 印刷業
  • 問屋業
  • 案内業
  • 電気供給業
  • 出版業
  • 両替業
  • 冠婚葬祭業
  • 土石採取業
  • 写真業
  • 公衆浴場業(むし風呂等)
  • 電気通信事業
  • 席貸業
  • 演劇興行業
  • 運送業
  • 旅館業
  • 遊技場業

◇第2種事業(3業種):税率4%

  • 畜産業
  • 水産業
  • 薪炭製造業

◇第3種事業(30業種) :税率5%

  • 医業
  • 公証人業
  • 設計監督者業
  • 公衆浴場業(銭湯)
  • 歯科医業
  • 弁理士業
  • 不動産鑑定業
  • 歯科衛生士業
  • 薬剤師業
  • 税理士業
  • デザイン業
  • 歯科技工士業
  • 獣医業
  • 公認会計士業
  • 諸芸師匠業
  • 測量士業
  • 弁護士業
  • 計理士業
  • 理容業
  • 土地家屋調査士業
  • 司法書士業
  • 社会保険労務士業
  • 美容業
  • 海事代理士業
  • 行政書士業
  • コンサルタント業
  • クリーニング業
  • 印刷製版業

なお、次の業種は税率が3%です。

  • あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復 その他の医業に類する事業
  • 装蹄師業
[シニアガイド編集部]