介護と育児が同時に襲う「ダブルケア」の実態
ダブルケア経験者のリアルな状況
ソニー生命保険が、ダブルケアに関するインターネット調査の結果を公開しています。
この調査は、全国7地域×男女の比率が均等になるように2,100人の有効回答を集めたものです。
ダブルケアとは、子育てと介護に同時に携わることを指す言葉です。
ここでは、実際にダブルケアを経験した人の状況を見ていきましょう。
グラフは調査結果を基に編集部で作成しました。
ダブルケアになると3割近い人が離職に追い込まれる
ダブルケア経験者は、2,100人の回答者のうち、114人でした。
このうち、「介護や育児を理由に、仕事をやめたことがある」人は、29.8%です。
男女別では、男性が24.6%なのに対して、女性は37.8%と高くなっています。
子育てと介護に同時に携わる「ダブルケア」の状況に追い込まれると負担が大きく、高い確率で離職に追い込まれることがわかります。
ダブルケアは、肉体だけではなく精神面の負担が大きい
「ダブルケアで何が負担に感じるか(感じたか)」という質問では、「精神的にしんどい」が一番多い回答でした。
あまり差がなく、「体力的にしんどい」「子どもの世話を十分にできない」が続きます。
この3つの回答は、5割以上の人が挙げており、多くの人に共通した苦労であることがわかります。
ダブルケアにかかる費用は月に8万2千円
「ダブルケアに関する毎月の費用」では、平均負担額の合計は81,848円でした。
内訳は、「親(義理の親)の医療・介護関連費用(介護用品や移動費も含む)」が29,623円、「子どもの保育・教育関連費用(習い事や塾等も含む)」が33,087円、「その他」が19,138円です。
「ダブルケア」という言葉を造り、今回の調査を共同で行なっている「英国ブリストル大学 山下順子講師」と「横浜国立大学 相馬直子准教授」は、次のようにコメントしています。
内閣府の「ダブルケア実態調査」(2016)ではダブルケアの経済的コストに関する質問項目は無く、本調査のダブルケアコストのデータは貴重である。まず、女性と男性での意識にギャップが見られる。
男性はその費用負担を、5割は親の年金・預貯金、 もう5割は子ども(うち4割は自身の世帯収入・1割は他の兄弟や親戚の収入)で負担すると回答している。
一方で女性の回答を見ると、7割は親の年金・預貯金、3割は子ども(うち2割は自身の世帯の収入、1割は他の兄弟や親戚の収入)と、男性よりも親の年金・預貯金から出すことを考えている。男女間の収入状況や婚姻関係などの影響があらわれているとも思われる。
ダブルケア経験者のダブルケア費用は毎月約8.2万円であり、親への費用が高まれば、子どもへの費用が低くなることも推測される。
また、ダブルケア経験者の8割弱の人が親の医療・介護関連の費用を一部負担しており、8.7%は全額負担している。ダブルケア世帯にとって、年金とは子ども費用にも直結する問題であり、改めて、高齢世帯への年金・医療・介護保障の重要性が浮き彫りになっている。