70代後半の人に支給されている年金の平均は「137万3千円」
保険制度の資料を利用して収入を探る
現役世代が、自分の老後に不安を抱く理由の1つが、現在の高齢者がどれぐらいの収入があって暮らしを立てているかが分からないことです。
そこで、厚労省が公開している「後期高齢者医療制度被保険者実態調査報告」を利用して、後期高齢者の収入を探ってみました。
後期高齢者医療制度の保険料は収入に応じて算出されるので、報告書には、各年代ごとの収入が記載されているのです。
計算を簡単にするために、「75歳から79歳」の70代後半に限定して、どんな収入がどれぐらいあるのかを見てみましょう。
年金額は「50万円~150万円」が多い
最初に、気になる「年金」の金額を見てみましょう。
75歳から79歳の人の年金額の平均は「137万3千円」です。
実際の支給金額で一番多いのは、「50~80万円」でした。
次が「100~150万円」で、三番目が「80~100万円」です。
この3つを合わせると、半分以上を占めます。
自分の将来の参考にするときは、年金の平均は137万円、幅としては「50万円~150万円」ぐらい、と思えば良いでしょう。
なお、年金を受給する資格がなく「年金収入なし」という人も3.7%います。その一方で、「1,000万円以上」という人も存在します。
現役時代の準備の差が、年金金額の差となって表れることが分かります。
収入の8割は年金
70代後半の収入は年金だけではありません。
所得の種類を5つに分けて、内訳を見てみましょう。
一番多いのは、「雑所得」で80%近くを占めています。
雑所得に分類されるのは、「公的年金」を除くと、「原稿料」などごく限られたものだけですから、ほとんど「公的年金」と考えて良いでしょう。
農業を含む事業や会社勤めなどで収入を得ている人も20%います。
70代後半でも、5人に1人は現役で稼いでいるのです。
各所得の簡単な説明は、次の通りです。
- 事業収入 製造業や小売業などの事業によって得られた所得です。ここでは農業による所得は含めていません。
- 農業・山林所得 農業や林業による所得を指します。
- 給与所得 会社からもらう給与や賞与を指します。
- 財産所得 株式による配当、利子利息、土地や建物の賃貸料などを指します。
- 雑所得 他の所得以外のものを指します。公的年金は、ここに分類されます。
収入の総額は「200万円」ぐらい
最後に「所得額」を見てみましょう。
70代後半の所得額の平均は「93万3千円」です。
ここで言う「所得」とは「収入から必要経費等を差し引くなどして得られた金額」です。
「所得なし」だからと言って、収入がまったくないというわけではありません。
例えば、年金の収入額が120万円未満の場合は、「公的年金等控除」により所得額が「0円」になります。
したがって、一番多いのは「所得なし」で、ほぼ半分を占めます。
所得がある人に限ると、一番多いのは「100~200万円」でした。
これに控除枠いっぱいの年金があったとして120万円を足すと、実際の収入は200万円ぐらいと考えて良いでしょう。
だいたい、このあたりを目安と考えれば良いでしょう。
特に大きな支出がなければ、日常的な生活を送るには不足のない金額と言えます。
年金が基本だが、他の収入も考えよう
最後に、もう一度整理してみましょう。
70代後半の収入の8割は「年金」で、その金額は「50万円~150万円」が主流でした。
しかし、2割の人は、年金以外の収入を得る手段を持っています。
その方法は、事業や農業、サラリーマンなどさまざまですが、それらを含めた収入は「220万円~320万円」で、生活費をまかなえる金額です。
現在の現役世代が年金を受け取る時代には、年金の支給額は減少することが予想されます。
現役のうちに、できるだけ厚生年金や確定拠出年金などを積み上げると同時に、年金以外の収入源を用意することを考えましょう。