万一のために知っておきたい「生活保護」の基礎知識

[2017/4/13 00:00]

「生活保護」は最後のセーフティネット

生きていく上では、さまざまな障害があります。

たとえば、病気やケガなどの障害に対しては、自分で加入している生命保険を始め、健康保険や障害年金などの公的な制度がセーフティネットとして支えてくれます。

しかし、それらの制度からの支援も得られない状況に追い込まれたときに、最後のセーフティネットとして存在するのが「生活保護」です。

残念なことに、生活保護については、制度についての知識が行き渡っておらず、申し込みの方法を知っている人の方が珍しい状況です。

この記事では、生活保護制度の最低限の知識を紹介し、本当に必要になったときには、なにをすれば良いのかが分かることを目指します。

生活保護を受けるための要件

生活保護は“最後の”セーフティネットですから、受けるための条件も厳しくなっています。

  • 預貯金は生活費に充てる(つまり、ほぼ預金がない状態が求められる)
  • 生活に利用されていない土地・家屋等があれば売却して生活費に充てる(原則として、自動車もダメ)
  • 働くことが可能ならば、その能力に応じて働く
  • 年金や手当など他の制度で給付を受けることができる場合は、それらを利用する
  • 親族等から援助を受けることができる場合は援助を受ける

これらの条件は、「生活保護は世帯単位で行ない、世帯員全員が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することが前提であり、また、扶養義務者の扶養は、生活保護法による保護に優先する 」という要件に沿ったものです。

つまり、自分の財産や他の制度、援助できる親族など、すべての手を尽くした上でないと、生活保護は受けられません。

ただし、持ち家や自動車については、必要性に応じて使い続けられることもあります。受給申請時に確認しましょう。

生活保護の申し込みから受給まで

生活保護制度の利用の申し込みは、地元の「福祉事務所の生活保護担当」が窓口となります。

面談は必須です。

生活保護制度の説明、要件の確認、そして生活保護制度以外の生活福祉資金、各種社会保障施策等の活用などの検討が行なわれます。

保護の申請をすると、生活状況や資産の調査が行なわれます。

資産の調査では、資産や金銭については、丸裸になると思っていた方が良いでしょう。例えば、預金通帳の写しや、働いている場合は給与明細などの提出が求められることもあります。

申請から、原則として14日以内、最長30日で、生活保護の受給の可否が回答されます。

具体的にいくら貰えるのか

生活保護には、支出の対象ごとに、いくつかの「扶助」があります。

ここでは、食費・被服費・光熱水費などを対象とする「生活扶助」について見てみましょう。

生活保護で支給される金額は、家族構成や居住地によって決まる「生活扶助基準額」から収入を差し引いた差額が支給されます。

例えば、東京23区内に在住の高齢の単身者(68歳)の場合、生活扶助基準額は79,790円です。

年金などを含めて、他の収入がまったく無いとすれば、この金額が支給されます。

居住地は5段階に分類されており、地方の郡部ならば、生活扶助基準額が「64,480円」となります。

同じように、高齢の夫婦世帯(夫68歳、妻65歳)の場合、生活扶助基準額は「119,200円」から「96,330円」の範囲となります。

なお、対象者に、障害者、母子家庭、中学生以下の子供を扶養しているなどの条件があれば、加算があります。

「生活扶助」以外にも、必要に応じて住宅扶助(家賃)、教育扶助(義務教育の学費)、医療扶助(医療費)、介護扶助(介護費用)などが支給されます。

とくに、医療と介護に関しては、実費が直接支払われ、本人負担がありません。

最後に頼るべきだが、頼るときはためらわずに

生活保護制度の趣旨は、「生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行ない、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長すること」を目的としています。

支給される金額や、制度を見ていると、「健康で文化的」であるとはいえ「最低限度の生活」を維持するためのものであることが分かります。

また、生活保護を受けるためには、金銭面や家族関係などの情報を提供する必要がありますし、預金や資産がある場合は、先にそれを使うことが優先されます。

そういう意味では、本当に「最後に頼るべきセーフティネット」であり、何か他の手立てがあれば、そちらを優先すべきでしょう。

逆に言えば、自分の現状を、生活保護を受けるための条件と比べてみれば、何か手立てが見つかるかもしれません。

その上で、生活保護を受けるための条件が満たされているのであれば、ためらわずに保護の申請をしましょう。

生活保護は、国民に対して用意されている単なる制度の1つでしかありません。特別なものと考えずに、使えるものは活用して、再起する方法を考える時間を稼ぎましょう。

[シニアガイド編集部]