生活保護の手前にできた、もう1つのセーフティネット「生活困窮者自立支援制度」
生活保護の手前にできた新しい制度
何かの原因で働けなくなったり、収入が途絶えてしまったりしたときに、生活を支えてくれる仕組みがセーフティネットです。
日本の場合、健康保険と年金が最初のセーフティネットになります。
例えば、医療費がかかった場合は、基本的には健康保険が7割を負担してくれます。また、働けなくなった場合には「障害年金」や「老齢年金」などが支えとなります。
また、最後のセーフティネットとして「生活保護」があります。「資産や能力等すべてを活用してもなお生活に困窮した」場合に、一定の保護費が支給されます。
しかし、「保険や年金」と「生活保護」の間には、大きな隙間があります。
その間を埋めるように、2015年にできた新しいセーフティネットが、「生活困窮者自立支援制度」です。
「生活困窮者自立支援制度」は、働く意思がある人を対象に、一時的に支援して自立をうながす制度です。
生活に困っていて生活保護に至りそうな人や、生活保護から抜け出した人などの利用が想定されており、再び働くための環境を作る支援を行ないます。
相談窓口は福祉事務所や自治体の福祉部門
「生活困窮者自立支援制度」の相談窓口は、市区町村に設置された福祉事務所になりますが、自治体によっては、自治体の福祉部門が窓口になっている場合があります。
厚労省が公開している自立相談支援機関 相談窓口一覧(PDF)で、確認してください。
2つの必須事業と、4つのオプション
「生活困窮者自立支援制度」の事業は、必ず用意されている「必須事業」と、地域に任されている「任意事業」に分かれています。
必須事業は、次の2つです。
- 自立相談支援事業
就労その他の自立に関する相談支援、自立に向けた支援計画の作成等を実施します - 住居確保給付金の支給
離職により住居を失った方に対し、家賃相当額を有期で給付します
つまり、自立に向けた計画の立案と、現在の住居の家賃については、どの自治体でも必ず制度が用意されています。
任意事業は、次の4つです。
- 就労準備支援事業
就労に必要な訓練を、日常生活自立、社会生活自立段階から有期で実施します - 一時生活支援事業
住居のない方に対して、一定期間宿泊場所や衣食の提供等を行ないます - 家計相談支援事業
家計に関する相談、家計管理に関する指導、貸付のあっせん等を行ないます - 子供の学習支援事業
子供に対して、学習支援や保護者への進学助言等を行ないます
例えば、「就労準備支援事業」として「就農訓練」など独自の事業を行なう自治体も出てきました。
農場に通うことで、生活リズムなどを改善し、働くために必要な基礎能力を習得することを目的としています。
また、任意事業を行なっていない場合でも、ハローワークや教育委員会など、既存の組織と連動することでカバーしている場合もあります。その場合は、あっせんを行なった上で同行するなどの形で支援しています。
本当に困ったときは、相談する勇気を
「なんらかの理由があって、働けなくなったらどうしよう」という不安は、働いている人なら誰もが抱いています。
そういう不安に対して、貯金や生命保険などの自助努力で備えることも大切ですが、公的なセーフティネットが利用できる場合も少なくありません。
そして、公的な制度は、自分で申請しないと支援が受けられません。
なにかあったら、最初は勤務先の総務部門に、そこが不安なら健康保険の窓口や年金事務所、さらにハローワークや福祉事務所、自治体の福祉窓口というように、相談できるところはたくさんあります。
とりあえず、「いろいろな制度が用意されている」ということと、「イザとなったら勇気を出して公的な窓口で相談する」ということは覚えておきましょう。