家族に介護が必要になった時のための「介護休暇」と「介護休業」の基本

[2017/5/17 04:22]

よく似た名前の2つの制度

家族が介護が必要な状態になった時に、会社を休んで介護を行なうための制度として「介護休暇」と「介護休業」という方法があります。

よく似た名前ですが、2つの制度は、期間や使い方に違いがあります。

ここでは、この2つの制度について、基本的なことを紹介します。

対象となる家族の範囲

「介護休暇」と「介護休業」の対象になる家族の範囲は共通です。

「配偶者(事実婚を含む)」、「父母および子(祖父母、兄弟姉妹および孫を含む)」、「配偶者の父母」です。

たとえば、配偶者の祖父母は、対象となりません。

「介護休暇/介護休業」の対象となる家族 出典:厚労省資料

「介護が必要な状態」とは

「介護休暇/介護休業」の対象となる家族の状態は、『負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする「要介護状態」にある者』とされています。

介護保険制度の要介護状態区分では「要介護2」以上が目安となっています。これは、「歩行や起き上がりなどに部分的な介護が必要な状態」とされている段階です。

ただし、いくつかの要素が満たされていれば、要介護認定は必要ありません。

また、会社に対しては『基準に厳密に従うことにとらわれて、労働者の介護休業の取得が制限されてしまわないように柔軟に運用することが望まれる』としています。

あまり厳密に考えずに、「歩行ができない」「ベッドから車椅子に移乗できない」「介助がないと食事できない」などの状態であれば、対象になると考えて良いでしょう。

「介護休暇」は年に5日間

「介護休暇」は、1年度に5日まで取得できます。

さらに、対象家族が2人以上の場合は10日まで取得できます。

休暇は1日または半日単位で、何回に分けてもかまいません。

なお、「介護休暇」は直接的な介護だけではなく、買い物、通院の付き添いなどの世話が理由でもかまいません。

なお、介護休暇については、有給にするか無給にするかは就業規則で決めて良いことになっています。

もし、あなたの会社の就業規則で、介護休暇が無給とされているのであれば、介護休暇よりも先に有給休暇を使うという判断もあります。

「介護休業」は93日間休める

「介護休業」は、介護休暇よりも長い期間を必要とする場合に使う制度です。

休業期間は通算で「93日間」です。3回までに分割して取得できます。

なお、介護休業は「休業」ですので、原則として無給となります。

雇用保険の「介護休業給付金」を利用できるように準備しましょう。

これは、一定の条件に合えば、配偶者や父母らを介護するために休業した場合、賃金の67%を最大93日分受給できる制度です。

実際には、もっと休める会社が多い

厚労省が行なった「平成28年賃金事情等総合調査(確報)」という調査によれば、企業による実際の運用では、「介護休暇」「介護休業」とも、規定より長い期間取得できるところが多くなっています。

例えば、介護休業の期間を「1年間」としている企業が58%もあります。

出典:「平成28年賃金事情等総合調査(確報)」

また、介護休暇でも18%の企業は「10日以上」としています。

出典:「平成28年賃金事情等総合調査(確報)」

支援制度を利用して粘ろう

ここでは「介護休暇」と「介護休業」を紹介しましたが、労働時間の短縮など、介護を支援するための制度は、いろいろと用意されています。

「平成28年賃金事情等総合調査(確報)」でも、多くの企業が、「超過勤務の免除」や「フレックスタイム制度」などを導入しています。

介護が始まるとわかっても、すぐに離職してしまうと、会社員のために用意されている、せっかくの制度が利用できなくなってしまいます。

また、いったん離職してしまうと、元の職場や、それと同等の賃金の職場に戻ることは簡単ではありません。

できるだけ離職しないように粘りましょう。

まず、会社に離職を言い出す前に、必ず自分の勤務先の「就業規則」を確認してみましょう。

そのうえで、総務部門や上司に事情を説明して、利用できる制度を相談することをおすすめします。

[シニアガイド編集部]