昨年だけで12人が死亡している、職場での熱中症に注意
職場でも熱中症対策が必要
「熱中症」というと、日常生活で気をつけるものというイメージがあり、テレビのニュースなどでも、高齢者や児童生徒が倒れた例を中心に報道されています。
しかし、職場における熱中症も、無視できない状態にあります。
例えば、2016年だけでも、462人の死傷者が出ており、そのうち12人が死亡しています。
特に猛暑が続いた2010年には、死傷者が656人と多く、そのうち47人が死亡しました。
毎年、数百人の死傷者と数十人の死者が出ています。
この記事では、職場における熱中症の特徴と、その対策について紹介します。
職場での熱中症の実例
熱中症による死傷者数を業種別に見ると、「建築業」「製造業」「運送業」などが多くなっています。
職場での熱中症のイメージをつかむために、建築業の実際の事例を1つ紹介します。
災害発生当日、被災者はマンション新築現場にてコンクリート打設の補助をしていた。昼の休憩後、午前中の作業の続きを始めたが、午後1時30分頃、突然転倒したので小休止を取らせ様子をみていたが、顔色が悪く、熱中症が疑われたので、救急車で病院へ搬送した。救急隊が到着した時は意識があったが、午後3時前に意識を失い、4日後に死亡した。(30代)
意外ですが、「商業」も熱中症による死傷者が多い職種です。
こちらも事例を1つ紹介します。
事業場にて商談、展示車両の洗車業務等に従事していた労働者が、午後5時30分頃、事業場内の清掃作業中に頭痛を訴えた。2階の休憩室で休養し、午後7時過ぎに帰宅した。翌朝、起床してこないことから、家族が様子を見にいったところ、呼吸停止の状態で発見された。(20代)
いずれの事例も、年齢が若く、熱中症には年齢よりも職場環境の影響の方が大きいことが分かります。
7月と8月が危険な期間
熱中症による死傷者が出やすいのは、月で言えば「7月」と「8月」、時刻で言うと「14時~16時」です。
過去5年間で見ると、全体の約9割が7月および8月に発生しています。
時刻では、「14時~16時」以外に、午前中の「11時」にもピークがあります。
なお、涼しくなった「18 時台以降」が多めなのは、日中の作業終了後に帰宅してから体調が悪化して病院へ搬送されるケースがあるためです。
職場の環境と個人の健康管理の両方に注意
厚労省では、職場での熱中症対策として、5月1日から9月30日まで「STOP! 熱中症 クールワークキャンペーン」を実施しています。
そこで紹介されている熱中症対策のなかから、「重点取組期間」とされている7月の注意事項を紹介します。
- WBGT値(暑さ指数)の低減効果を改めて確認し、必要に応じ追加対策を行ないましょう。
- 特に梅雨明け直後は、暑さ指数に応じて、作業の中断、短縮、休憩時間の確保を徹底しましょう。
- 水分、塩分を積極的に取りましょう。
- 各自が、睡眠不足、体調不良、前日の飲みすぎに注意し、当日の朝食はきちんと取りましょう。
- 期間中は熱中症のリスクが高まっていることを含め、重点的に教育を行ないましょう。
- 異常を認めたときは、ためらうことなく救急車を呼びましょう。
これを見ると、職場の環境だけではなく、個人の健康管理にも注意が必要なことが分かります。
なお、その地域のWBGT値は、環境省の「熱中症予防情報サイト」で確認できます。