国民年金の予算の45%は税金が支えている
決算報告で分かった3つのトピック
平成28年度の「厚生年金・国民年金の収支決算」が、厚労省から公開されました。
今年度は、平穏な決算であまりニュースでも取り上げられなかったのですが、細かい数字を追っていくといくつか気がついたことがあります。
グラフを中心に、3つのトピックをご紹介します。
「国民年金」は、保険料よりも税金のほうが多い
厚生年金も国民年金も、収入の一部として、税金が投入されています。
今年度の国民年金では、税金の比率は45%で、保険料の34%を上回っています。
国民年金の場合、本来は税金と保険料が、ほぼ同じ割合になるはずなので、保険料の未納者の増加が影響しているのでしょう。
国民年金の未納者に対する取り立ては、厳しさを増していますが、この数字をみると無理もないという気がします。
なお、未納を続けていると、将来、年金が受け取れない「無年金」になってしまいます。
それは、自分が払った税金で支出されている45%分を、みすみす損することでもあります。金銭的に苦しい場合は、「免除」という方法もあるので、窓口で相談してください。
なお、厚生年金については、制度の違いなどで、税金の投入分は「19%」に留まっています。
「厚生年金」は「国民年金」の10倍の規模になった
古い年金関係の本では、「厚生年金は、国民年金のだいたい5倍の規模」と紹介されていました。
しかし、最新の決算では、厚生年金が40兆円台、国民年金が4兆円台で、10倍以上の差があります。
過去5年分のデータをグラフ化してみると、厚生年金が増え続ける一方で、国民年金は減り続けています。
厚生年金が増えたのは、公務員共済との統合で、加入者が増えたことが主な理由です。
逆に、国民年金は加入者の減少が続いています。
「年金積立金」の「簿価」と「時価」の差が大きくなっている
厚生年金も国民年金も、余ったお金は「年金積立金」へと送られます。
「年金積立金」の現在の残高は、約100兆円です。
国民年金と厚生年金の予算の合計が約50兆円ですから、年収の2倍ぐらいの貯金がある状態と考えて良いでしょう。
年金積立金は、その一部を投資していますので、株や債権などを買った時の金額である「簿価」と、現在の評価額である「時価」があります。
過去5年分を見ると、簿価と時価の差が、だんだん大きくなっています。
例えば、2016年度の簿価は117兆円なのに対して、時価は153兆円ですから、差が36兆円もあります。
これは、購入した時点よりも財産の価値が上がったということですから、喜ぶべきことではあります。
しかし、2015年のように時価が下がると、年金の予算に影響が出てしまいます。
大きな紛争などが起きて、株価や債権などの市場が下がらないことを祈りましょう。