売るつもりのない貴金属を無理やり買っていく「押し買い」の実例
60歳以上の女性に多い「押し買い」「訪問購入」のトラブル
業者が高齢者などの自宅を訪れて、貴金属や着物を強引に買い取っていく、「押し買い」や「訪問購入」と呼ばれる買取業者によるトラブルについて、国民生活センターが警告しています。
「押し買い」については、毎年8千件前後の相談が消費者センターに寄せられています。
相談を寄せた人の多くが60歳以上で、女性の割合が8割近いため「怖くなって売ってしまった」という例が多くみられます。
ここでは、トラブルの実例を3つ紹介し、最後にトラブルに遭わないための注意事項を紹介します。
【実例1】形見の指輪を転売されてしまった
「不用品の買い取りキャンペーンをやっている。不用品があれば買い取る」と女性が訪問してきた。いきなりだったので今すぐには用意できないと言うと、「1時間後に来るので用意しておくように」と言われた。
1時間後、今度は男性が訪問してきた。いらない洋服やバッグなどを出したが、「壊れた宝飾品があれば出してほしい」と言われたため、指輪やネックレス、ブレスレットなど数点出した。結局これらを2万5千円で買い取ってもらったが、購入業者から名刺しか渡されず、契約書は渡されなかった。
その後、形見の指輪も買い取りに出したことを後悔し、高価な宝飾品を何点も出したのに2万5千円の買い取り価格は安すぎると思ったことから、購入業者に買い戻したいと電話で伝えたところ、「物品は別の業者に手渡してしまった」と言われた。
大切な宝飾品も売ってしまったので全部返してほしい。
(60代女性)
【実例2】売るつもりのないダイヤの指輪を強引に買われた
「いらない古着や宝石、携帯電話機などはないか」と電話があり、不要な古着、食器を売るつもりで準備していたが、来訪した購入業者の男性2人は用意していたものには目もくれず、指にはめていたダイヤの指輪と金の時計を見て、「良い指輪だ。今後の参考のために外して写真を撮らせてほしい」と言ってきた。
売るつもりはなかったが写真だけなら良いと思い、指輪を外して担当者に渡した。さらに「他にアクセサリーはないか」と言うので、売る気はないと前置きをしたうえで、宝石箱を担当者に見せたが、「この中でいらないものはないか」と聞かれたので、いらないものを出し、結局、ネックレス7点と指輪2点を合計1万円で売却することになった。古着30着は処分扱いで0円であった。
担当者が帰ったあと、写真を撮らせたダイヤの指輪が買い取られたことが分かり、すぐに購入業者に電話したが、ダイヤの指輪は紛失したという。大切な指輪なので返してほしい。
(70代女性)
【実例3】クーリング・オフをしたいが購入業者と連絡がとれない
「いらない靴や衣類などないか」と電話があり、ブランド品で履かない靴があったので来てもらった。
「他に貴金属でいらない物はないか」と聞かれたので、金やプラチナのネックレスなどの買い取り価格を出してもらった。良い値段で買い取ってくれそうだったので使わない物を買い取ってもらった。
しかし、後で明細を見ると思っていたより安かったので、ネットで調べると、やはり安すぎるとわかった。クーリング・オフしたいが、購入業者に電話をしてもつながらない。
(60代女性)
トラブルを防ぐための注意
国民生活センターでは、押し買いのトラブルを防ぐために、次のようにアドバイスしています。
- 突然訪問してきた購入業者は家に入れない
- 買い取りを承諾していない貴金属の売却を迫られたら、きっぱり断る
- 購入業者から交付された書面をしっかり確認する
- クーリング・オフ期間内は、購入業者に物品の引渡しを拒むことができるので物品を渡さない
- 購入業者とトラブルになった場合には消費生活センター(全国共通電話番号:188番)に相談する
「押し買い」や「訪問購入」については、以前からトラブルが多いため、2013年2月に特定商取引に関する法律(以下、特商法)が改正されて、規制が厳しくなりました。
しかし、実際に業者を玄関から入れてしまうと、「怖くて断れなかった」という例が少なくありません。
また、書類を作成することやクーリングオフ期間を明示するなど、基本的なルールを守らない業者もいます。
- 自分の氏名や会社名を言わない
- 事前に買い取りを承諾していない物品について、突然、売却を求める
- 強い口調などで強引に買い取ろうとする
- 契約書面を書かない
などの行動が見られたら、すぐに消費者センターや警察の窓口に相談しましょう。