「写真を撮るだけで、3日以内に3万円稼げる」という情報商材商法の仕組み

[2017/11/1 00:00]

「写真を撮るだけで稼げる」というオイシイ話

消費者庁と東京都が、「写真を撮るだけで、3日以内に3万円稼げる」というキャッチフレーズで、高額な情報商材を売りつける業者について警告を発しています。

警告対象の業者名は「株式会社アイデア」です。

フォロワーを集めると3万円貰える

まず、「アイデア」の手口を紹介しましょう。

アイデアは、「カシャカシャビジネス」などの名前でWebサイトを開設します。

このサイトでは「写真を撮影して、3日以内にお金を稼ぐ方法です」などの文句で勧誘を行ないます。

勧誘の内容は、「スマホなどで写真を撮影して稼ぐ方法が記されたPDFファイルを、通常価格10万円のところ、今なら2万円で販売する」というものです。

これは、いわゆる「情報商材」というもので、これ自体は違法ではありません。

PDFファイルの内容は、「撮影した写真を、写真共有SNSのインスタグラムにアップし、3日間でフォロワーを50人以上集めると、現金3万円をプレゼントします」と書かれています。

フォロワーの人数や、プレゼントの金額は時期によって、変動しています。

ここで、フォロワーを集めて現金を貰えば、情報商材に支払った2万円を差し引いても、確実に1万円儲かります。

しかし、これは撒き餌(まきえ)でしかありません。

特別コースに入ると何が起こるか

送られてきたPDFファイルには、次のように、さらに高いレベルへの勧誘が書かれています。


特別コースのご紹介。1万円の利益じゃ物足りない! さらに高い収益を狙いたい方へ。プラス料金7~150万円が発生してしまいますが、インスタアップ(自動集客ツール)を使用し、徹底したサポートを受けながらカシャカシャビジネスを体感できます

特別コースに加入すると、自動集客ツール「インスタアップ」のIDとパスワードが送られてきます。

このツールを使うと、特別コースに加入した人が、自分の写真を公開する際に特定のハッシュタグ(例えば#instaup)を設定するだけで、自動的に多数のユーザーによってフォローされます。

ハッシュタグがフォローされることで、多数の人のタイムラインに、その投稿が表示されます。

つまり、特別コースに加入した人が投稿すると、特定のハッシュタグを設定するだけで、多くの人に見られる可能性が高くなります。

この状態で、「公開した写真を販売する」という設定を行なうと、『多くの人が写真を購入して利益が上がる』というのが業者の説明です。

最初の3万円と違って、業者からは1円も貰えません。自分で写真を売って稼ぐのです。

しかし、フォロワーが増えても、それは写真を見る人が増える可能性があるというだけであって、写真を買ってくれる人が増えるということではありません。

インスタグラムでは、人の写真を見ることと、その写真を購入することは、まったく異なることです。そこには大きな距離があって、写真を買ってくれる人は、ほんの一握りしかいません。

つまり、インスタアップというツールがあっても、インスタグラムで写真を売るのは、誰もが簡単に稼げる方法ではないのです。

カシャカシャビジネスの仕組み 出典:消費者庁

本当の目的は、特別コースへの高額な支払い

この情報商材商法は、最初に3万円を業者が出すことによって、消費者に「1万円儲かった」という経験をさせ、その成功体験によって高額な情報商材へ誘導するところがミソです。

そして、儲かる可能性が低いビジネスに対して、最大150万円もの高額な支払いをさせることが、本当の目的なのです。

「月収200万円」は嘘だった

さらに、消費者庁と東京都の共同調査によって、次の事実が明らかになっています。

  • 代表者の氏名は、Webサイトと登記とで表記が異なっているが、同一人物であった
  • Webサイトや登記に記されている住所は、住所を貸すバーチャルオフィスなどで実体はなかった
  • 販売しているPDFファイルには「通常価格10万円→いまだけ2万円」などの記述があるが、10万円で販売した事実はなかった
  • 同じく「月収200万円稼いでいる人もいます」も事実ではなかった
  • アイデアの代表者は、「廃業する」と申し立てているが、2019年10月18日現在で法人登記は残ったままになっている
  • インスタアップのように、自動的にフォロワーを増やす機能は、インスタグラムによって禁止されている違反行為である

以上のように、WebサイトやPDFファイルに書かれていた内容は、ほとんどが嘘でした。

しかも、法人登記やWebサイトも健在であって、廃業が実行されるかどうかも分かりません。

「ホームページに掲載されている、すべての情報が事実とは限らない」

東京都と消費者庁では、「アイデア以外にも情報商材に関する相談は数多く寄せられており、今後別の事業者が今回の事案と同様の手口で消費者被害を引き起こす可能性が高い」と警告しています。

また、次のような注意を行なっています。

  • ホームページに掲載されている、すべての情報が事実とは限らない
  • 情報商材は、内容が中身を見るまでわからないので、想定した情報が得られるとは限らない
  • 特に「必ず儲かる」など都合の良いことばかり強調している業者には注意が必要である
  • 「電話でお問い合わせください」という番号に電話をかけると、執拗に勧誘されることがある

少しでも不審な点がある場合には、「消費者ホットライン」(188)または、「警察相談専用電話」(#9110)に相談するよう、呼びかけています。

電話番号は、いずれも局番なしで全国からかかります。

[シニアガイド編集部]