障害者手帳を持っていても、障害年金を貰うには別の手続きが必要です

[2017/12/3 00:00]

障害者手帳と障害年金は別の制度

先日、病院の待合室で、「~さんは、障害者手帳を持っているから、障害年金が貰えていいわねぇ」という会話を耳にしました。

会話の主は、「障害者手帳を持っていると、自動的に障害年金が貰える」と信じているようです。

気になって調べてみると、闘病中の方が書いたブログなどでも、同様の誤解をしている例がいくつかありました。

実際は、「障害年金」と「障害者手帳」は別の制度です。

障害者手帳を持っていても、自動的に障害年金が貰えるわけではありません。

ここでは、それぞれの制度のあらましと、利用するための相談窓口などを紹介します。

「障害者手帳」は福祉を受けるためのパスポート

障害者手帳の例

「障害者手帳」は、病気やケガなどによって障害を持っている人が、各種の福祉サービスを受けるために必要となるものです。

「障害者手帳」を持っているからと言って、現金などが貰えるわけではありません。

しかし、障害者手帳を持っていると、いろいろなサービスが受けられます。

「障害者手帳」は、サービスを受けるための身分と障害の程度を証明するパスポートだと考えればイメージしやすいでしょう。

公的なサービスで言えば、医療費や所得税の負担が軽くなります。

また、多くの公共交通機関では「障害者割引」が用意されていますが、利用する際は障害者手帳を持っている必要があります。

「障害者手帳」を貰うために相談する場所は、住んでいる地域の区市町村の福祉事務所か障害福祉担当窓口です。

東京都の身体障害者手帳交付の手順 出典:東京都福祉保健局

「障害年金」は年金の一種

「障害年金」は、病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、受け取ることができる年金です。

単に「年金」というと、高齢になってから貰える「老齢年金」をイメージしがちですが、現役世代に対しても「障害年金」のような制度が用意されているのです。

「障害者手帳」とは異なる制度ですから、障害年金を請求するにあたって、障害者手帳を持っている必要はありません。

「障害年金」は、年金の一種ですから、サービスではなく、現金が支給されます。

「障害年金」の金額は、基本的には障害の程度によって決まります。

ベースとなる障害基礎年金の場合、2級が老齢基礎年金の満額相当の金額になります。1級は、2級の1.25倍の金額です。

2017年12月時点では、2級の年額が「779,300円」、1級の年額が「974,125円」です。

障害基礎年金の場合、18歳未満の子供がいると増額されます。

さらに、障害を受けた時点で厚生年金に加入して、基礎年金の「第2号被保険者」であれば、自分の収入や条件に応じた「障害厚生年金」が給付されます。

障害基礎年金と一緒に受け取れますから、貰える金額が増えることになります。

「障害年金」の相談窓口は、日本年金機構の年金事務所です。

障害を分類する等級も異なる

2つの制度では、障害の程度を表すために、分類するための「等級」が用いられています。

しかし、障害者手帳の等級と、障害年金の等級は同じではありません。

「身体障害者手帳」では、障害は「一級」から「七級」に分類されています。

障害の程度の確認は、指定の資格を持った医師によって診断されます。

「障害年金」では、障害は「障害等級1級」から「障害等級3級」に分類されています。

障害の程度の確認は、主治医などの医師による診断書を提出することで行なわれます。

いずれも、実際の等級判定は、病名ではなく、対象となる人の障害の程度によって行なわれます。

40歳以上であれば「介護保険」が使える場合も

あなたが40歳以上であれば、上記の2つの制度以外に「介護保険」も使える可能性があります。

介護保険は、「保険」という名前ですが、お金が支給されるわけではありません。利用者は、サービスの形で受け取ります。

例えば、車イスを安くレンタルしたり、ヘルパーさんに介助してもらうなどのサービスが利用できます。

ただし、介護保険は、基本的には「65歳以上」の高齢者を対象とした制度で、それ以外では「40歳以上で特定の16の病気の患者」だけに限定されています。

また、介護保険を使うためには、「介護認定」という、医師による認定を受ける必要があります。

そして、認定された「要介護認定」によって、利用できるサービスに差が出ます。

介護保険について相談する窓口は、住んでいる地域の区市町村の介護福祉課です。

介護保険の介護度の目安

利用できる制度はたくさんあるので、誰かに相談しよう

日本の福祉サービスは、それなりに手厚いのですが、いくつもの制度が並列にあって、それぞれ独立しています。

また、ほとんどのサービスが申請制になっていて、自分が申請しなければ、サービスを受けることができません。

どんな制度があって、どんな支援が得られるか、それを得るためにはどこに申請すれば良いか、ということを、一般の人が調べるのは限界があります。

ある程度大きい病院であれば、「ケースワーカー」「ソーシャルワーカー」などと呼ばれる専門のスタッフが配置されています。

そういうスタッフがいる場合は、真っ先に相談してみましょう。

周囲に、ケースワーカーなどがいない場合は、各自治体の社会福祉事務所や福祉担当の窓口に相談してみましょう。

その窓口で決着がつかなくても、どの窓口に相談すれば良いかなど、問題を解決するための手がかりは得られるはずです。

[シニアガイド編集部]