障害年金の請求手続きを、社労士に依頼するかどうか決めるポイント

[2017/12/8 00:00]

障害年金は、手続きが難しい年金か

「障害年金」は、病気やケガで障害が残った時に、頼りになる「年金」です。

障害年金は、20歳以上で、必要な条件を満たしていれば、生きている間ずっと年金を受け取ることができます。

そして、「障害年金」というキーワードで検索すると、「社会保険労務士(社労士)」による『1,500件以上の申請実績』とか『結果にこだわる・成功率99%』という派手な広告が目に入ります。

高齢になったら貰える「老齢年金」や、遺族に残される「遺族年金」では、こういう広告は見たことがありません。

このような広告がたくさん表示されるので、「障害年金」は社労士の助けを借りないと手続きができない、難しい年金というイメージを持っている人も多いでしょう。

実は条件は3つだけ

実際には、「障害年金」を貰うための条件(受給要件)は、3つしかありません。

  • 初診日に年金に加入していた
  • 一定の障害の状態にある
  • 一定の保険料を納付している

どれも、そんなに難しそうではありません。

必要書類も多くない

では、「障害年金」を申請するための書類が多いのでしょうか。

これも、そんなに多くありません。次の通りです。

  • 年金請求書
  • 年金手帳
  • 戸籍謄本/住民票
  • 所定の書式による医師の診断書
  • 病歴・就労状況等申立書
  • 預金通帳
  • 印鑑

この中では、「年金請求書」と「病歴・就労状況等申立書」の2つが、少し難しいかもしれません。

しかし、素人では絶対に書けないというほどではありません。

1項目ずつ埋めていけば、なんとかなるレベルです。

手続きを難しくする2つのポイント

では、いったい「障害年金」の請求手続きの何が難しいのでしょう。

障害年金の申請において問題となりやすいポイントは、2つあります。

1つは「初診日の確定」です。

例えば、糖尿病が基で、人工透析を受け始めた場合を考えてみましょう。

そのきっかけとなった糖尿病は、実際にはかなり前に診断を受けていることが多いのです。

病院のカルテが保存されている5年以内に初診日がある場合は良いのですが、例えば15年前のできごとで、カルテもないとなると、初診日を確定することが難しくなります。

さらに、何年前に、どこの病院だったかも分からないという場合もあるでしょう。

その場合には、探し方のノウハウや、それなりの書類を作る知識が必要となります。

つまり、初診から、あまり時間が経ちすぎている場合は、社労士に相談して、手続きの代行を依頼する価値があります。

もう1つは「一定の障害の状態にある」ことの証明です。

例えば、「人工透析」や「ストマ(人工肛門)」のような状態が把握しやすい障害と、「抗ガン剤の服用によって、だるさがひどく、日常生活を送るのに支障がある」という障害を比べると、前者のほうが第三者に理解されやすいことは間違いありません。

「精神に関わる障害」の場合は、第三者に納得してもらうための努力が、さらに必要となります。

「障害年金」の審査は、書面で行なわれます。

そのため、「所定の書式による医師の診断書」と「病歴・就労状況等申立書」の書き方によって、審査の判断が左右される可能性があります。

障害年金の申請に慣れた社労士には、「病歴・就労状況等申立書」において、どのポイントを押さえて、どのような記述をすれば良いかという知識と経験があります。

場合によっては、医師に診断書を書いてもらう際にも、「この状況の、ここを詳しく書いてもらうように」という助言をすることができます。

結論から言うと、初診日が不詳などの、不利な条件がある場合は、それを立証するためのノウハウを持っている社労士に依頼した方が、「障害年金」の審査に通る確率が上がります。

自分で請求手続きをしても良い場合

逆に、どのような条件であれば、自分で請求手続きをしても良いのでしょうか。

障害年金の対象となる障害は、初めて医師の診療を受けた日から1年6カ月を経過してから判断されます。

それだけの期間があれば、障害の状況が安定しているという判断です。

しかし、下記の8つの障害については、1年6カ月を待たずに、障害年金を申請することができます。

  • 人工透析療法を行なっている場合は、透析を初めて受けた日から起算して3カ月を経過した日
  • 人工骨頭又は人工関節を挿入置換した場合は、挿入置換した日
  • 心臓ペースメーカー、植え込み型除細動器(ICD)又は人工弁を装着した場合は、装着した日
  • 人工肛門の造設、尿路変更術を施術した場合は、造設又は手術を施した日から起算して6カ月を経過した日
  • 新膀胱を造設した場合は、造設した日
  • 切断又は離断による肢体の障害は、原則として切断又は離断した日(障害手当金又は旧法の場合は、創面が治癒した日)
  • 喉頭全摘出の場合は、全摘出した日
  • 在宅酸素療法を行なっている場合は、在宅酸素療法を開始した日

つまり、手術を行なったことによる障害や、重度の障害の場合は、問答無用で障害と認められます。

別の言い方をすると、これらの障害は、第三者でも状況が確認できる、はっきりとした障害です。

多少、提出書類が素人っぽかったとしても、審査の担当者に否定される可能性は少ないでしょう。

したがって、「障害年金」を申請する理由が、上記の8つのいずれかである場合は、自分で請求手続きをしても良いでしょう。

それで審査に通れば、社労士に支払う数万円~数十万円の謝礼を省くことができます。

万が一、自分で行なった障害年金の申請が却下された場合でも、その時点で社労士に依頼して、改めてチャレンジすれば良いのです。

もちろん、何度も年金事務所等に通って手続きを行なうこと自体が難しいという場合や、自分の条件が悪い場合は、最初から社労士にお願いしましょう。

途中で諦めて放置してしまったり、悪い条件のまま何度もトライして結果が得られないことに比べれば、プロに謝礼を払い、そのノウハウを活用して年金を貰える方がずっと良いのですから。

[シニアガイド編集部]