所有している土地を更地にしておいてはいけない理由

[2018/2/19 00:00]

「土地」の管理は難しい

自分の資産として「土地」を持っていると、さまざまな手間とお金がかかります。

資産の形が、「現金」や「証券」などの場合に比べても、土地を管理して運用するには知識が必要となります。

ここでは、土地に関わる税金の基礎知識を紹介しましょう。

更地に厳しい「固定資産税」

土地にかかる税金の代表が「固定資産税」です。

「固定資産税」は、土地や建物などを所有している限り、毎年かかる税金です。

この「固定資産税」は、3年に1度見直される「評価額」が基準となります。

持っている土地が、何も建物が無い更地(さらち)であれば、「評価額」がそのまま「課税標準額」になります。

この「課税標準額」に標準税率の1.4%を掛けた金額が「固定資産税」となります。

しかし、その土地に住宅を建てると、次のように税金が安くなります。

  • 小規模住宅用地
     住宅1戸当たり200平方mまでの部分は「小規模住宅用地」として、固定資産税が6分の1になります。
  • 一般用住宅地
     住宅地の200平方mを超える部分は「一般用住宅地」として、固定資産税が3分の1になります。

つまり、国や自治体は税制によって、土地をそのままにせず、住宅などに利用するように誘導しているのです。

なお、所有している土地や建物が、市街化区域に指定されている地区にあると、「都市計画税」も課税されます。

また、財政が厳しい自治体では、固定資産税の税率を高くしている場合もあります。

日本の土地税制は、何かに土地を利用して、税金分だけでも稼がなければならないと、背中を押される制度となっているのです。

建物があると相続税も有利に

土地に掛かる税金としては、「相続税」も忘れてはいけません。

こちらは、相続時に掛かるものですが、土地に関しては優遇される特例が多く、専門家の知識が必要となる場合が少なくありません。

ただし、うまく利用すると、「現金」で相続するよりも「土地」で相続した方が有利であるとされています。

たとえば、市街地に土地を持っており、アパートを建てると「貸家建付地」という制度により、評価額が約80%に減ります。

また、建物としてのアパートの評価額も、建築費そのままではなく約60%で評価されます。

つまり、現金をそのまま相続するよりも、その現金で土地を買ってアパートを建てた方が、相続税の金額が何割か安くなります。

これが、相続税対策として、更地にアパートを建てる人が多い理由なのです。

むやみにアパートを建てれば良いわけではない

しかし、土地を持っていれば、何がなんでもアパートを建てれば良いというものではありません。

建物にも「固定資産税」が、入ってくる家賃には「所得税」が掛かります。

空室が出れば家賃が減りますし、建物が古くなれば家賃が下がります。

建物には定期的なメンテナンスが欠かせませんし、入居者が入れ替わればリフォームが必要になる場合もあるでしょう。

土地と同様に、建物の管理運営も、手間とお金がかかるものなのです。

家賃収入や税制面でのメリットと、管理運営というデメリットを総合した上で、メリットの方が上回るような計画が大切です。

たとえば、10年後も同じ家賃が入るという計画や、何室か空室が出た場合だけで赤字になったり、何年か1度のメンテナンス費用も計算に入っていないような計画では、手間と借金だけ増えて実利が伴いません。

どんな建物を建てるのかという構想の段階から、専門家の知識が必要となるのです。

アパート以外にも広がっている可能性

ここまでは市街地にある住宅を前提にしてお話をしてきましたが、土地を活用する方法は住宅に限りません。

家賃収益はあきらめ、最低限の建物を建てて、自分が倉庫として使うという判断もあります。

立地が良く広さがあれば、定期借地権で貸し出し、分譲マンションにすることもできます。

また、企業向けに貸し出してオフィスや老人ホームなどの施設にした方が、地域に寄与するかもしれません。

土地が郊外のロードサイドであっても、店舗や倉庫、工場という可能性があります。

“土地活用=アパート”という思い込みにとらわれず、冷静な第三者の目でみれば、思わぬ活用方法が見つかる可能性があります。

手放す前に、まず相談を

一部の週刊誌では「土地は“不動産”ではなく、“負動産”だから、一刻も早く手放すべきだ」と主張する記事もあります。

しかし、先祖から受け継いだものであっても、自分で購入したものであっても、土地には思い入れが染み込んでおり、そう簡単に手放せるものではありません。

たとえ、最終的に売却する場合でも、その前に、何か活用する方法がないのか、どうすれば有利に相続できるのかを専門家に検討してもらうことは無駄ではありません。

手付かずのまま、次世代に引き継いで迷惑を掛けないように、早めに準備を進めましょう。

[シニアガイド編集部]