故人の借金から逃れる「相続放棄」について教えてくれる本

[2018/3/12 00:00]

マイナスの相続を避けるための本

「ウチの親には、財産なんかないから、相続の知識なんか関係ないよ」という人がいます。

こういう人が、「相続」を縁遠いものと感じるのは、相続するのは家や土地やお金などのプラスの財産であると、無意識に考えているからでしょう。

たしかに、そう考えると、相続の知識が必要なのは、ごく一部の人です。

たとえば、ある程度以上の相続財産があって相続税が掛かる人は、相続する人の8%しかいません。

つまり、90%以上の人には、相続税がかかるような大きな財産などないのです。

しかし、世の中にはプラスがあれば、必ずマイナスがあります。

相続で言えば、借金や保証人としての責務が残る、マイナスの相続もあるのです。

そして、残されたことによって苦労する確率は、借金などの方が、ずっと高いのです。

ここで紹介する『身内が亡くなってからでは遅い「相続放棄」が分かる本』(ポプラ社刊、本体価格1,400円)は、このマイナスの相続を避けるための方法を紹介した本です。

著者は、椎葉基史(しいば もとふみ)氏で、家族が借金を相続して苦しんだことをきっかけに司法書士になったという経歴を持っています。

「相続放棄」という選択肢

この本が、借金などのマイナスの相続を避けるために紹介している方法は「相続放棄(そうぞくほうき)」です。

「相続放棄」は、相続時に選べる3つの選択肢の1つで、プラスもマイナスも含めて、「故人の権利や義務を一切受け継がない」という選択です。

具体的には、家庭裁判所に対して「相続の放棄の申述」という手続きを行ないます。

これだけで、故人が残した借金や、故人が行なった連帯保証による債務を逃れることができます。

実は、この手続き自体は、そんなに難しくありません。

実際に、身近で相続放棄を行なった人もいますが、役所で行なわれる無料法律相談窓口に相談しただけで、自分で手続きを完了しました。

それだけで、故人が残した借金を引き継ぐことが避けられるのです。

「相続放棄」の厄介な落とし穴

しかし、相続放棄には、いくつかの落とし穴があります。

主に次の3つが厄介事の原因となります。

  • 相続放棄の手続きは、相続人となった事実を知ったときから3カ月以内に行なわなければならない
  • 一度、すべて受け継ぐ「単純承認」を選ぶと、相続放棄ができなくなる
  • 誰かが相続を放棄すると、次の順位の人に相続権が移る

つまり、相続から3カ月を経過した後に、故人に借金があることが分かったりすると、「相続放棄」できない場合があるのです。

また、自分ひとりが相続放棄をすれば終わりではなく、次の順位の人も含めて関係者が解決に向けて力を合わせる必要があります。

この本には、そのような厄介事の例が、次から次へと、これでもかというぐらいに描かれています。

よほど、相続放棄に詳しい方でなければ、「あっ、そんな落とし穴があるんだ」という驚きがあるでしょう。

ページ数は200ページ余りありますが、アッという間に読み終えてしまいます。

これは、ゆったりとしたレイアウトや、サラッとした文章も一因ですが、それ以上に、「これが自分の立場だったら」という切迫感に追い立てられ、一気に読んでしまうのです。

親は財産を秘密にしたがる

一度でも、家族の相続や葬儀に関わったことがある方なら、「家族であっても、その人のことを全部知っているわけではなかった」と思い知らされた経験があるでしょう。

普通に家族として暮らしている状況では、お互いに交友関係や財産について、すべてを話すことはありません。

ましてや、ちょっと縁遠くなっていたりすると、相続時に思いがけないマイナスの遺産が出てくる可能性があるのです。

「家族の借金は、残された者が引き継ぐべき」という考えの方もいらっしゃるでしょうが、それには限度があります。

身近な人が死んだだけでも大変なショックなのに、自分が作ったものでもない、数十万円、数百万円の借金が、いきなり降り掛かってきたら、それはこれからの人生に対して重荷でありすぎます。

「相続放棄」は法律で認められた正しい手続きです。

それを選択することを恥じたり、尻込みする必要はまったくありません。

借金を残した家族も、それを残したことを苦にはしても、それを被ってくれとは思っているはずがありません。

自分の親、兄弟、夫、妻、子などが、プラスだけではなく、マイナスの財産を残す可能性が少しでもある方は、この本を読んで備えておくことを強くお勧めします。

[シニアガイド編集部]