2018年8月から変わる、70歳以上の高額療養費制度

[2018/5/10 00:00]

高額療養費制度が8月に改正

2018年8月に、高額療養費制度が改正され、「70歳以上」の負担額が大きく変わります。

高額療養費制度は、病気やケガなどで医療を受けた際に、自分が払う医療費に上限を設ける制度です。

例えば、高額な抗癌剤治療などで、医療費が何百万円になったとしても、設定されている「自己負担限度額」以上の金額を支払う必要はありません。

高額療養費制度の仕組み 出典:厚労省資料

今回の改正は、本人の年齢が「70歳以上」について行なわれ、「69歳以下」については変更がありません。

この記事では、70歳以上の高額療養費制度について解説しながら、改正点のポイントを紹介します。

収入が多い「現役並み」が焦点

2018年8月の改正の内容は複雑ですが、3つにまとめられます。

  • これまで「年収370万円以上」とされていた、「現役並み」の区分を3つに分ける
  • 「現役並み」のうち、収入が多い人については、自己負担限度額を引き上げる
  • 「年収156万円~370万円」の「一般」についても、一部の自己負担限度額を引き上げる

改正の焦点は、収入が多い「現役並み」の人です。

これまでは、「現役並み」と言っても、「70歳以上」ということで抑えた形になっていました。

しかし、今回の改正では、「69歳以下」の現役とほぼ同じ仕組みとなり、本当に「現役並み」の負担が求められるようになります。

「現役並み」の収入がある方は、自分の生活に影響がありますから、改正の内容を、よく知っておく必要があります。

「一般」に該当する人は、大きな変化はありません。「通院の場合だけ自己負担限度額が、少し上がる」と覚えておけば良いでしょう。

「住民税非課税等」の人は、今回の改正で変わる点はありません。

収入によって3つに分類されている

最初に、「現役並み」などの区分について紹介しておきましょう。

高額療養費制度では、70歳以上について、収入をもとに3つに分類しています。

適用される区分は、収入が多い順に、「現役並み」「一般」「住民税非課税等」です。

そして、この区分ごとに、自己負担限度額が決められています。

加入している医療保険が「健康保険(健保)」の人は標準報酬月額が、「国民健康保険(国保)」の人は課税所得が基準となります。

なお、「住民税非課税等」だけは、標準報酬月額や課税所得が基準ではなく、住民税が非課税になっている世帯を対象としています。

出典:データを基に編集部が作成

「現役並み」を3つに分割

これまで、「現役並み」は、想定されている年収が「370万円以上」でひとまとめになっていました。

2018年8月の改正では、これを3つに分割し、収入が多い人の自己負担限度額を引き上げます。

つまり、同じ「現役並み」であっても、収入が多い人は、自己負担する金額が多くなってしまうのです。

目安となる年収や、基準となる金額は、下の表を参照してください。

出典:データを基に編集部が作成

年収1,160万円以上なら、1カ月の負担が25万円以上に

では、自己負担分が、どのように増えるのか見ていきましょう。

年収によって、3つに分割された「現役並み」のうち、上の2つは自己負担限度額が引き上げられます。

出典:厚労省資料

例えば、1カ月に「100万円」の医療費が掛かったとしましょう。

年収が1,160万円以上の場合、次のように計算します。

252,600円+(100万円ー842,000円)×1%

ですから、「252,600円+(158,000円)×1%」となって、「254,180円」となります。

改正前なら、同じ医療費に対して、負担する金額は「87,430円」ですから、なんと20万円以上も支払いが増えてしまうのです。

「現役並み」だけ「外来」という区分が無くなる

さらに「現役並み」には負担増が待っています。

高額療養費制度は、「70歳以上」に限って、「外来」という区分があります。

これは、通院で「外来」だけ使った場合の特別の区分です。

例えば、「現役並み」の場合、入院を含む場合の自己負担限度額が約8万円なのに対して、「外来」では57,600円でした。

つまり、入院しないで、通院だけにすると、1カ月に支払う金額が2万円以上も安かったのです。

しかし、2018年8月からは、「現役並み」のみ、「外来」の区分が無くなります。

通院だけであっても、入院を含む場合と同じ金額を払うことになります。

「一般」と「住民税非課税等」には、これまで通り「外来」があります。

「一般」の負担増

区分が「一般」の場合、今回の改正で引き上げられるのは、「外来」の場合の自己負担限度額だけです。

これまでは「14,000円」でしたが「18,000円」になります。

一般の場合、「外来」については、年間の上限が「144,000円」と決まっているので、通院回数が多くても、「現役並み」のような大きな負担増はありません。

「現役並み」には大きな影響

このように、今回の改正は70歳以上の「現役並み」に対して、大きな影響があります。

今回、上がるのは「自己負担限度額」ですから、必ず出費が増えるというわけではありません。

しかし、万が一の際に、出ていく金額が大きなものになる可能性があるのは、不安のタネとなります。

70歳以上の方は、自分の標準報酬月額や課税所得を確認し、自分がどの区分に属しているのか確認しておきましょう。

そして、万が一の場合に備えて、自己負担限度額の2カ月分ぐらいを、現金や普通預金で準備しておきましょう。

なお、今回の高額療養費制度の改正に伴い、医療保険と介護保険の自己負担額を合算した金額に対する「高額介護合算療養費制度」の上限も見直され、69歳以下と同じ金額になります。

医療と介護を両方抱えている場合は影響が出ますので、こちらも確認してください。

出典:厚労省資料
[シニアガイド編集部]