サラリーマンの健保や年金の保険料を決める「標準報酬月額」
「標準報酬月額」という仕組み
サラリーマンの場合、健康保険、厚生年金などの保険料は、給与が支給されるときに、あらかじめ差し引かれています。
差し引かれる保険料の金額は、給与を基にして計算されますが、その際に「標準報酬月額」という数字が使われます。
ここでは、その「標準報酬月額」について、基本的な仕組みを紹介しましょう。
「標準報酬月額」が必要な理由
最初に、「標準報酬月額」という仕組みが必要なわけから説明します。
あなたが仕事の見返りとして受け取る「報酬」は、毎月一定とは限りません。
時給の場合は勤務時間で変わりますし、月給の場合でも手当などの関係で少しずつ変わります。
それに合わせて、毎月毎月、保険料を計算し直すのは大変です。
そこで、1年のうち特定の月の報酬を基準として「標準報酬月額」を決め、1年間の保険料はそれを基にして計算することになっています。
具体的には、「4月から6月の3カ月」の報酬を基として「標準報酬月額」を計算し、「その年の9月から翌年の8月」まで使用します。
なお、ここで言う「報酬」は、被保険者が労務の対償として受けるものすべてを含みます。
つまり、「給与」だけではなく、「手当」なども含めて計算します。
標準報酬月額の決め方
次に「標準報酬月額」の決め方を見てみましょう。
ここでは、一般的な協会けんぽの例を紹介します。
協会けんぽは、都道府県ごとに保険料の率が違うので、ここでは東京都の表を使っています。
本来は、下のような幅の広い表なのですが、数字が読みやすいように、必要な分だけ切り抜いているので、ご了承ください。
まず、4月から6月の報酬の合計を、3で割った金額を計算します。これを「報酬月額」と言います。
ここでは、あなたがパートタイマーで、報酬月額が「85,524円」だったとしましょう。
これを保険料額表にあてはめてみると、「83,000円以上~93,000円未満」に該当します。
そのまま左を見ると、この金額の「標準報酬月額」は88,000円と分かります。
つまり、あなたの報酬月額が85,524円ならば、あなたの標準報酬月額は「88,000円」となります。
健康保険料の計算方法
次に標準報酬月額が88,000円の場合の健康保険の保険料を計算してみましょう。
標準報酬月額が「88,000円」の項目から、表を右へ見ていくと、あなたが40歳未満で「介護保険に該当しない場合」の保険料は「8,712円」です。
そして、協会けんぽの場合、保険料の半分は会社が出してくれますから、実際に自分が払う金額は「折半額(せっぱんがく)」の「4,356円」になります。
あなたが、40歳以上で「介護保険料も含む場合」は、保険料が「10,093.6円」に、折半額が「5,046.8円」となります。
厚生年金保険料の計算方法
厚生年金の保険料も忘れてはいけません。
標準報酬月額が88,000円の欄の左端にある等級には「4(1)」と2つ書かれています。
これは「4」が健康保険の等級、「1」が厚生年金保険の等級です。
厚生年金保険は、この等級が始まりになるので、「83,000円以上~93,000円未満」ではなく、「~93,000円未満」と下の金額も含めるように読み替えます。
表を右に見ていくと、厚生年金の保険料は「16,104円」であることが分かります。
厚生年金も、会社が半分もってくれますから、実際に払う「折半額」は「8,052円」です。
ボーナスは「標準賞与額」で計算
ここまで毎月の給与のことを見てきましたが、ボーナスについてはどうなるのでしょう。
ボーナスの保険料は、「標準賞与額」で計算します。
「標準賞与額」の計算は簡単で、税引き前の賞与の額から1千円未満の端数を切り捨てたものです。
ボーナスは、給与のように1年単位では考えず、支給されるたびに「標準賞与額」を計算します。。
なお「標準賞与額」は支給1回に付き150万円が上限です。それを超える場合は「150万円」として計算します。
賞与にかかる健康保険と厚生年金の率は、毎月の給与にかかる率と同じです。
ですから、「標準賞与額」から保険料を計算するときは、標準報酬月額の表をそのまま利用します。
給与明細を見れば「標準報酬月額」は推定できる
この記事で説明したのは、標準報酬月額の基本的な部分だけですが、これだけでも、自分の健康保険と厚生年金の保険料が決まる仕組みはおわかりでしょう。
自分の給与明細書を見れば、実際に天引きされている保険料の金額から、自分の「標準報酬月額」を推定することもできるはずです。
なお、協会けんぽの場合、都道府県によって保険料率が異なります。必ず、自分の会社の所在地がある都道府県の表を見てください。
また、組合健保の場合は、それぞれの健保組合のホームページで確認してください。
また、標準報酬月額の決め方には、年度の途中で大きく昇給したり、転職した場合など、ここでは説明しなかったルールもあります。
詳細については、会社の総務部門などに確認してください。