2017年9月から厚生年金の保険料率が「18.3%」に引き上げ
厚生年金の保険料率が上がる
厚労省が、厚生年金の保険料率の引き上げを発表しています。
現在、「18.182%」の保険料が、2017年9月からは「18.300%」に上がります。
厚生年金の保険料は、会社と折半の上で、強制的に徴収されています。
したがって、実際に個人が負担する保険料率は「9.15%」ですが、天引きされる金額が増えるので、手取りの金額が下がります。
国民年金保険料は3月に値上げ済み
厚生年金とセットになっている国民年金の保険料は、2017年3月に「16,490円」に値上げ済みです。
ただし、国民年金保険料は、平成16年(2004年)の物価水準で「16,900円」と定められているため、物価の変動によって実際の保険料額は変わります。
実際に、2018年3月からの新年度には「16,340円」への引き下げが決定しています。
年金保険料の引き上げは一段落
今後も、年金保険料の値上げは続くのでしょうか。
実は、2004年の年金制度改革の時点で、「2018年をめどに保険料(率)は固定する」と決定されています。
したがって、今回の値上げが最後で、今後は保険料が固定されます。
当面は、厚生年金の保険料率は「18.3%」、国民年金保険料は「16,900円」(2004年物価水準)となります。
値上げが無くなることで見えてくる未来
年金保険料が固定されて、値上げが無くなるのは良い知らせですが、良いことばかりではありません。
2004年の税制改革の趣旨は、「入るお金を決めて、出るお金はそれに合わせる」というものでした。
「年金保険料は値上げした上で固定」と「基礎年金の税金からの負担は2分の1に固定」の2つの施策で、入るお金を決めてしまいます。
これに手持ちの「積立金」を加えれば、年金に割り当てられる財源が決まります。
しかし、これから年金を受け取る高齢者は増えていきます。
それを抑えるために、財源の範囲内で、年金の金額を自動調整する「マクロ経済スライド」という仕組みが導入されました。
これによって、1人当たりの年金が上下します。
簡単に言えば、入るお金に合わせて、出るお金を自動的に調整してしまうわけです。
この制度によって、将来の年金には、どんな影響があるのでしょう。
2014年時点で、厚生年金を受け取っている標準的な家庭の収入は、現役時代の収入の62.7%でした。
つまり、年金の金額は、現役時代の収入の約6割でした。
これが、マクロ経済スライドなどの施策によって、2043年には現役時代の収入の約5割に下がる見込みです。
さらに厳しい想定も公開されていますから、基礎年金と厚生年金については、現在の水準よりも下がることは間違いないと考えた方が良いでしょう。
年金が下がることを前提に、収入の上積みを図る
改めて、今回の厚生年金保険料率の値上げについて考えてみましょう。
目前のことを考えれば、値上げは痛いできごとです。
しかし、これで当面の値上げが終わるのは良いことです。
でも、その先に見えるのは、将来の年金水準の低下です。
2004年の年金制度改革は、「年金制度全体が潰れることが無いようにする代わりに、年金の金額は引き下げる」という方針で行なわれました。
それに備えるために自分でできることは、基礎年金や厚生年金だけに頼らず、それに上乗せするための3階部分の年金や貯蓄などを用意しておくことです。
厚生年金の保険料率値上げは、将来への備えについて改めて考える節目となる出来事なのです。