2018年8月から、70歳以上の高額療養費の負担が拡大

[2018/7/5 00:00]

1カ月の医療費の上限を決める「高額療養費制度」

2018年8月1日から、70歳以上の高額療養費の上限が引き上げられます。

「高額療養費制度」は、病院や薬局で支払った医療費が、1カ月の上限額を超えた場合に、超えた分の金額が戻ってくる制度です。

加入している健康保険が、国民健康保険、協会けんぽ、健康保険組合、後期高齢者医療制度のいずれであっても、同じ制度が適用されます。

今回の高額療養費の上限の引き上げは、昨年に続くもので、一定以上の年収があり負担能力がある人に、現役世代並みの負担を求めるものです。

目前に迫った、今回の引き上げの要点を、改めて紹介しましょう。

「現役世代並み」は大きく引き上げ

実際に、どのように上限が変わるのかを見てみましょう。

まず、「現役世代並み」とされる、「年収が370万円以上」の枠が、3つに分かれます。

そして、それぞれ69歳以下の「現役世代」と同じ金額に、1カ月の上限額が引き上げられます。

具体的には、これまで80,100円が上限だったのが、「年収770万円~1,160万円」は167,400円に、「年収1,160万円以上」は252,600円に上げられます。

出典:厚労省

「多数回該当」も引き上げ

高額療養費制度には、過去12カ月以内に3回以上上限額に達した場合に、4回目から上限額が下がる「多数回該当」という制度があります。

これは、重い病気などで医療費がかさんだときに、負担が大きくなりすぎないようにするための制度です。

今回の引き上げでは、「多数回該当」の際の上限金額も、それぞれ現役世代と同じになります。

なお、70歳以上では、「住民税非課税」区分の「多数回該当」はありません。

出典:厚労省

「一般」は「外来」の上限が引き上げ

年収が「370万円未満」の「一般」では、「外来」の上限額だけ、14,000円から18,000円へ引き上げられます。

ただし、年間で144,000円という外来の上限は残るので、抗ガン剤治療などで、極端に通院回数が多い場合は、以前と同じ金額になります。

「低所得者」とされる、住民税非課税世帯では引き上げがありません。

2018年7月までの制度からの変化をまとめると、次のようになります。

出典:厚労省

一部の階層では、「限度額適用申請書」が必要に

現役世代並みの、「年収770万円~1,160万円」と「年収1,160万円以上」では、「限度額適用認定証」の申請が必要となります。

「限度額適用認定証」があると、高額療養費制度の上限を超える医療費を窓口で払う必要がなくなり、あとから請求する手間がかかりません。

該当する階層の人は、入院や通院が決まったら、窓口に請求して手に入れておきましょう。

出典:厚労省

「年齢」から「負担能力」へ

今回の高額療養費の上限額の引き上げの内容を見ると、70歳以上であっても、費用の負担ができるの能力がある人は、現役世代と同じ負担を求めるという方針です。

今回の引き上げでは「住民税非課税世帯」は対象外となっています。

これまで、高齢者であれば一律に負担が軽くなる制度が多かったのですが、今後は、年齢だけを基準にする制度は減っていきます。

これからは、同じ年齢であっても、個人の負担能力によって金額が変わる場面が増えていくでしょう。

[シニアガイド編集部]